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『日本人の承認欲求 テレワークがさらした深層』 太田肇 34

日本人の承認欲求
テレワークがさらした深層

太田肇(おおた はじめ)

新潮新書 947

そもそも緊張感やストレスはある面で承認に欲求と深く関わっていて、緊張感やストレスを感じない環境では承認欲求も十分に満たされないのが普通だ。ドキドキしない代わりにワクワクもしないのである。そしてコロナ下でテレワークが続くと、仕事や人間関係などに自信が持てなくなってきたとか、孤独感を覚える人やメンタルに不調をきたす人が増えてきたとかいうのも、無意識の中で承認欲求の大切な部分が満たされていなかったからだと考えられる。p52

 毎日朝早く起きて、満員電車に揺られての通勤はイヤだなぁと思っていた人にとって、コロナ禍がもたらした在宅勤務はとても快適に思えていました。でも、その生活が続くうちに、自宅で家族とずっと顔を突き合わせていることにストレスを感じたり、そもそも自宅には自分用の机さえなかったということに気づいた人が多かったのです。

 ですから、オフィスへの出勤と在宅勤務をバランスよく配分するのがいいのではないかと考え、実行した会社はかなりあります。

 でもコロナ禍が収まってきて、いきなり会社へ100%出勤しなければならなくなった会社もあります。それは何故なのかと考えてみると、一般社員の希望ではなく、どうも管理職の都合であるようなのです。

仕切りがないオフィスへのこだわり

大部屋で働きたがる上司は、良い上司か?p61

 部下を手元に置いて目を光らせていないと管理できないと思っている管理職が、日本ではとても多いのです。それは何故なのかと言えば、それぞれの仕事の内容があいまいで、上司自身が把握していないからというところにあるようなのです。

 外資系のオフィスの場合、ある程度の地位の人には個室があり、一般社員であってもブース(壁で仕切られたコーナー)で働く人が多いのです。わたし自身が外資系オフィスで働いた経験でも、その通りです。隣の人の視線や音に煩わされないブースで働くことで集中力とリラックスを得ることができるのです。

 日本の仕事の効率が悪いというのは、そういうところにも原因があるのかもしれません。大部屋で机を並べての作業というのは、管理職にとって都合がよさそうに見えているだけで、働いている側から言えばずっと監視されているわけですから、ストレスは増えます。

 

(会社が副業を認めないのは)会社として、また管理職として社員を共同体のなかに囲い込んでおきたいという本音である。囲い込んでおけば少々待遇が悪くてもやめる心配がないし、無理な要求でも聞いてくれるなど、会社にとって有利な点が多かったのである。p154

 会社というムラ社会だけで生活していると、その中での慣習や規則に縛られるのが当たり前だと思い込まされてしまいます。副業を認めないというのは、外の世界を見せないという意味が大きかったのですね。

 

「自由」と「承認」は成熟社会の職業生活において、いわば「車の両輪」のように大切なものだ。自由のない承認は無意味だし、承認のない自由はむなしい。p190

 「会社の言うとおりにしていれば定年まで安心して働ける」というモデルは崩壊しました。意味のない会社の無理を通そうとするのは、もうダメなんです。サービス残業や、パワハラや、会社を辞める自由さえないという現実は、多くの人たちの人生をないがしろにしてきました。

 日本で働いても給料は上がらないし、権利を主張すると上司は逆切れするしということに嫌気をさした若者は、少しずつ海外へ脱出し始めました。

 上司の承認欲求だけを優先してきた日本の会社組織構造をもう終わりにしないと、日本から若い人がいなくなってしまうかもしれません。

2696冊目(今年34冊目)

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