『もうあかんわ日記』 岸田奈美 39
「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」 の岸田家に危機が訪れたのです!
突然原因不明の発熱が13日も続いたお母さんから、東京に住む奈美さんにSOSが入ったのです。急いで実家に帰ってみたら、もう家で看病するレベルではなくて入院させなきゃ!という状況だったのですが、時期が最悪だったのです。新型コロナのせいで、発熱している患者を受け入れてくれる病院が絶望的にない!
発熱しているだけでコロナのリスクがあり、心臓の基礎疾患もあるので、何件もの病院から診察を断られたけど、1件だけすぐに診てくれる病院があった。そこでPCR検査をしてもらえた。これがなかったら、大学病院へスムーズにかかれなかった。
大学病院では尿検査、血液検査、カメラを飲み込んでの心エコーといった、ありとあらゆる検査をためして、いろんな科の何人もの先生が原因菌を探ってくれた。
一刻を争う状況で、集中治療室のベッドも、手術のスケジュールも空きがない。だけお、手術の当日、事情があって手術をキャンセルした継承の患者さんがいらっしゃって、母はすぐに手術してもらえることになった。
中略
不運と降雨の奇跡にまみれている岸田家は、また、奇跡に助けられたのだ。
そして奇跡は、神様が起こすんじゃなくて、人が起こすんだと、ひとりひとりの顔を思い浮かべながら、わたしは確信した。p49
やっとお母さんを入院させることはできたけど、病院へ行っても、必要なものを渡すだけで面会できません。スマホを通して会話はできたけど、じかに会えないのはやっぱりもどかしいのです。
ダウン症の弟はそれなりに助けてくれるけど、大問題なのがボケてるお祖母さん。ご飯を作り置きしておいても捨てちゃうし、飼い犬と年中バトルしているし、とにかく記憶力が持たないので、ありとあらゆることを邪魔される!怒ってみても覚えてないから、またしでかすの連続で、奈美さんは毎日「あかんわ~」とつぶやくのです。
2021年3月10日から37日分のこの日記は、その闘いの記録です。大変なことが山積みだったけど、おかげでいろんなことを変えることができました。お祖母さんはデイサービスへ、弟はグループホームへ行くようになりました。
いろんな人に相談して、助けてもらって、そして、お母さんが家に帰ってきました。
人生にはいろんなことがあるけれど、正面からぶつかっていけば何とかなるものなんですね。
入院生活をウキウキさせるには「絶対に必要な消耗品を、いつもよりちょっと贅沢にして、選べるようにする」を覚えておきたい。p76
ご飯をおいしく食べるための「ちょっと高級なふりかけ」や、いつもより「ちょっと高いけど香りがすてきなシャンプー」で、お母さんがどんなにか幸せに過ごせていたと知って、奈美さんは嬉しかったのでしょうね。こういうことって、大事だなぁ。
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