『自由というサプリ 続・ラブという薬』 いとうせいこう、星野概念 32
前作「ラブという薬」は、いとうさんが音楽仲間で精神科医の星野さんと、心の不調のことや精神科へ行くということについて話をしていました。その本をきっかけにして青山ブックセンター本店で4度開催されたイベント「青山多問多答」の内容をまとめたのがこの本です。
精神疾患が厄介なのは、他の人から症状が見えないということなんです。ケガをして血が流れているというような傍目から見てわかりやすいものと違って、本人がかなり苦しんでいても他人にはなかなかわかってもらえないんです。
たとえばおなかが痛いとか、歯が痛いというような、自分もそうだったことがあるという症状なら、そりゃ安静にしなくちゃとか、歯医者へ行きなよって思えますけど、幻聴が聞こえるとか、実際にはない臭いを感じるとかということになると、ホントにわかってもらえないんです。
だからこそ、ちゃんと専門医に診てもらうことが大事なんですよね。
俺、思うんだけど「よくなるはず」っていう期待自体が、自分にも周りの人にも過剰にプレッシャーを与えるじゃない?
(中略)
「気苦労は人間の常態である」っていう風に考えておかないと。「止まない雨はない、いつか青空が見えるさ」って歌われたりしても「別に青空でなくてもいいんじゃね?」みたいな感じであってくれればいいなと思うよ、俺は。(p182 いとうせいこう)
これこそが大事なことだなのでしょうね。何らかの症状がスパッと良くなることなんてないんです。もし今の症状が良くなったとしても、別の症状が出てくるかもしれないし。天気みたいに晴れたり曇ったり、時には嵐だったり、いろんな状況下で、いかに上手く折り合っていくのかなんだろうなぁって思います。
そのためには自分の辛さを吐き出せる相手がいるってことが大事です。ずっとひとりでいると、どうでもいい事ばっかり考えちゃいますからね。そして、何か打ち込むことあるのが大事。みうらじゅんさんにいろんな「推し」を教えてもらったことに、いとうさんはとても感謝しているんですって!
2694冊目(今年32冊目)
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