『バカと無知』 橘玲 80
日本では高い偏差値ばかりが注目されるが、人口のおよそ6人に1人は偏差値40以下だ。だがこのひとたちには、高度化する知識社会の中で「見えない存在」にされている。
問題は、知識社会が(無意識のうちに)ひとびとの知能を高く見積もっていることだろう。
税務申告書から生活保護の申請まで、説明を読んで役所の書類を正しく記入するためには偏差値60程度の能力が必要になる。そうなると、自力で申請できるのはせいぜい5人に1人で、残りは(お金を払って)誰かに頼るか、あきらめるしかない。
この現実に気づかないのは、社会を動かしているのが高学歴のエリートで、自分のまわりにも同じような高学歴しかいないからだ。p84
昨年の暮れ、ご近所の高齢者の中での話題は「75歳以上の運転免許の更新」でした。通常の更新講習とは別に、「認知機能検査」「高齢者講習」「運転技能講習」を受けなければならないのですが、これらの検査や講習の予約をどう取るか?が大変だったのです。予約のための電話番号は書類に書かれていますけど、何度かけても、電話がかからないというのです。webの予約ページで予約を取ればといっても、それができない人が多くいるのです。
そういうことを相談できる同居家族がいない方から相談されて、予約手続きのお手伝いをしたところ、検査や講習自体は問題なく通過できたのです。でも、そこにたどり着くための説明書がとにかくわかりにくいし、字が小さい!きっと身近に高齢者がいない若い人が作ったのでしょうね。
会社を退職した後、最初の難関は確定申告です。それまで会社がやってくれていた税務手続きを、いきなりやらなければならない人はタイヘンです。いくらネットで相談に乗ってくれといっても、やっぱり対面で教えてもらわなかったらよくわからないんです。こういうところも、「きっとできるはず」という思い込みがあるのでしょう。
①日本人のおよそ3分の1は「日本語」が読めない。
②日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。
③パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。p81
こんな衝撃的な数字を見て、どう思いますか?わたしは、ある程度想像はしていたけど、ここまで酷いのかぁと思いました。「日本人なんだから日本語を読めないわけがない」とか、「多くの人がパソコンを使えるようになった」とか、日本人全体が勘違いしているのですね。
みんな、そんなにできるはずないんだという前提に立って、世の中の仕組みを変えていかないと、現実と理想のギャップに潰されて、いないことになってしまう人が増える一方なのだなと、この本を読んでため息をついています。
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