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『海の見える理髪店』 荻原浩 77

海の見える理髪店

荻原浩(おぎわら ひろし)

集英社文庫

第155回(2016年上期)直木賞受賞

 日本の父親って、みんな不器用で損してるなぁ。一生懸命働いてお金を家にちゃんと入れていればそれでいいって思っていたり。自分がやりたいことと現実の狭間で、自分が苦しむだけじゃなくて、家族まで巻き込んでしまったり。家族と一緒の時間を過ごせなかったことを、後になって後悔するって空しいよね。

 母親の方は、苦労は自分だけが背負えばいいって思っていたり。亭主に頼ることはもうできないという所まで追い詰められて、初めて自分が稼げないってことに気が付いたり。子どもに自分の価値観を押し付けていたり。自分が夫から構われていないという寂しさを、子どもに何かを強要することにすり替えている人が多いよね。だから子どもがいうことを聞かないんだってことに気がつかないのも、空しいよね。

 

・海の見える理髪店
 大物俳優や政財界の名士が通いつめたという伝説の床屋へ予約を入れてやって来た僕。理髪店の店主は昔話を聞かせてくれた。

・いつか来た道
 母親が大嫌いで家を飛び出してから16年。弟から、母の様子を見て欲しいと電話があった。

・遠くから来た手紙
 気の利かない亭主に頭にきて実家に戻ってきたのだけど、ここは落ち着いていられる場所じゃないことに気がついた。

・空は今日もスカイ
 茜とおかあさんは、田舎の実家に居候している。せっかくの夏休みなのに遊ぶ友達がいないから、茜は冒険の旅に出ることにした。

・時のない時計
 父親の形見の腕時計を直してもらいに時計屋に行った。時計屋のおじさんは、昔はやった奴だねぇと言いながら修理を始めた。

・成人式
 15歳で亡くなった娘宛に、成人式の着物のカタログが届いた。娘が亡くなってからずっと落ち込んでいた夫婦はあるアイデアを思い付いた。

 

 「海の見える理髪店」の店主のおじさんは、客のつむじの場所を見てピンと来たんだろうなぁ。どんな気持ちでしゃべっていたんだろう?話の中に出てきた「乙女刈り」ってヘアースタイル、なつかしいなぁ。わたしも小さいころは、床屋さんで乙女刈りにしてもらっていました。

 「空は今日もスカイ」の茜ちゃんは、頭のいい子よね。母親の実家での自分たちの立場が微妙だってこともよくわかっているし、母親が余り頼りにならないってこともわかってる。冒険の途中で出会った男の子のことを真剣に心配している。手のひらに書いてもらったメモが、彼女の人生を変えてくれたことを祈る!

 「成人式」の夫婦は、思い切ったことを計画したよね。フツーに考えたら「そんなことできるわけない」んだけど。どうしてもやりたかった気持ちわかるなぁ。娘の友だちの助けを借りることができたおかげで、この2人のこの後の人生は、かなり明るくなったんじゃないかな?「人生はやったもの勝ち」なんだよね!

 

 人生ってさ、楽しいことも悲しいこともあるから、楽しいことばかりならいいのにって思いながら生きているんだけど、思い出すのは楽しくないことの方が多いのは何故なのかなぁ?

 でもね、あの時は大変だったねって思えることこそが幸せなんじゃないかな。あの時は失敗しちゃった。この時は死ぬかと思った。そんな思い出を、ハハハって笑い飛ばせることができるなら、いいんじゃない?

 だから、わたしは今日も生きていられる。

2739冊目(今年77冊目)

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