『きみの話を聞かせてくれよ』 村上雅郁 96
中学生って子どもでもないし大人でもないしっていう不安定な頃だから、ちょっとしたことが心に引っかかってしまうことがあるの。仲良しだと思っていたあの子の、ふとした言葉に傷ついてしまったり。自分の理想と現実の差に気づいて自分に自信がなくなってしまったり。親が言うことは正しいと思いつつも、いうことは聞きたくないと思っていたり。
絵を描くことが好きだから美術部に入ったのに、自分の熱意だけが浮いてしまっているような気持ちになってしまった六花。お菓子作りが好きだけど男子だからというだけでからかわれてしまう虎之助。不登校気味の妹が心配な正樹。みんないい子なんだよ。だけど自分の悩みをどうしていいのかわからないから、悩んでる。
剣道部所属だけど幽霊部員の黒野くんが、どこからともなく現れて話始めると、なぜか悩みのことを話せちゃう。どうしてコイツとだとそういう話ができるんだろう?って思うんだけど、話す前と後では気分が全然違う。
episode 1 シロクマを描いて
episode 2 タルトタタンの作り方
episode 3 ぼくらのポリリズム
episode 4 いたずら男子の計画は
episode 5 ヘラクレイトスの川
episode 6 ウサギは羽ばたく
episode 7 くろノラの物語
「ヘラクレイトスの川」の話はいい話でした。「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」ってことなんだよね。こういう話を中学生の時にできるなんて、羨ましいなぁ。
そして、最後の話の中で、養護教諭の三澄先生が回想するところがいいですね。保健室は避難所でもあるから、こんな先生がいてくれると思うだけでも救われるもの。
わたし自身の中学生時代、そんなに嫌なことばかりではなかったけど、それでも捨てたかったことがあって、高校性になった時に違う自分になろうとしたことを思い出しました。何でもいいから打ち込めることがあって、何でも話せる人がいて、そういう学生時代を過ごせた自分は幸せだったんだなぁって、この物語を読みながら思いました。
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