『ヘルンとセツ』 田渕久美子 97
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は憧れの地、日本にやって来ることはできたのですが、最初に決まっていた仕事の話がうまくいかず、紆余曲折の後、1890年に松江の尋常中学校に赴任しました。
教師をするのは初めてでしたが、生徒たちの純真さに惹かれ、この仕事が大好きになります。そして、松江の美しさ、人の優しさに惹かれます。そんな彼のことをみんなは「ヘルン先生」と呼んでいました。
セツは没落した武家の娘です。もはや武士ではないのに気位だけは高い男たちは働きもしません。そんな家族を養うためにセツは働き続けていました。そんな彼女がヘルン先生の家の女中として雇われますが、周りの人たちは「妾になった」と陰口ばかり。
セツが話して聞かせた物語をヘルン先生は興味深く聞き、書き留めます。それが後の「怪談」となっていくのです。
最初の頃は、初めて見る外国人をもの珍しく感じていた人たちも、時とともにヘルン先生の人柄の良さに惹かれていきます。でも、彼のことを「異人」だからと言って、会ってもくれないセツの祖父のような人もいます。
新しいことに拒否反応を示す人はいつの世にもいるものですが、その頑なさが誰かを傷つけていると気づかないのは何故なのでしょう?そして、それまで陰口ばかり言っていたのに、お金を出してくれるからといって急にお愛想笑いを始めるなんて、恥ずかしいことだと気づけない人って、本当に情けないものです。
ヘルン先生もセツも、お互いが運命の人だと気づけて本当に良かった。周りが何と言おうと、ふたりとも自分の気持ちに正直になれて良かった。そして、最後の最後にセツの背中を押してくれた母、チエの「私を捨てなさい。・・・家を、家族を捨てなさい」という言葉に、母の愛を感じました。
2759冊目(今年97冊目)
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