『沼にはまる人々』 沢木文 99
わたしの周りには、何かにハマっている人が大勢います。アーティストの追っかけをやっている人、ミュージカルのツアーを全制覇する人、スポーツにのめり込む人、などなど。
看護師なので三交代の時間帯で働けることを利用して、お気に入りのエロビクスインストラクターを週に20コマ以上追っかけるというツワモノもいました。
某アイドルのミュージカルの追っかけだった人は、全国ツアーの時に、週末に今週は横浜、ウィークデーは東京に戻って5日働き、来週は静岡・・・と追っかけてというパターンで生活し、10か所以上の往復をして、最終的に台湾まで行ったそうです。
かつてコマ劇場があったころ、あそこは昼と夜合わせて1か月で50回ほどのステージがあったのですが、あるアーティストの大ファンだった友人は1か月間、全ステージを観に行ったと豪語しておりました。
普通の人から見たらかなり凄い熱量で「推し」ているのですが、体力的にツラくなった人はいても、金銭面で破綻した人は、わたしの友だちにはいません。なぜなら、グッズやチケットはたくさん買っても、決して「人に貢いでいない」からなのです。
沼にはまった人々の生い立ちを聞いていると、あまりにも共通点が多い。それは、両親との関係がうまくいっていないことだ。本人はそうは思っていないが、他者からするといびつなのだ。p252
もうひとつ、そういう人々と話していて気付いたことは、語彙が少ないことだ。
状況を説明してもらうと質問すると、「マジすごい」「ヤバい」「かわいい」「イケてる」「殺す」「キモイ」の他に、擬音を多用して説明する。p270
最近のニュースを見ていると、地下アイドルやホストに多額のお金がかかるので売春や犯罪に手を染めたという話が増えています。
沼にはまる人たちが「貢ぐ」という行為に走ってしまうのは、寂しいということが根っこのところにあるのでしょうか。家族と一緒に暮らしていても構ってもらえない人、学校や就職で家族から離れてしまった人、いじめにあった人など、孤独な人が増えているから、沼にはまる人も増えているのかもしれません。
そして、そんな自分の状況を見直してみるなんて、考えもしないのでしょう。だって現実を直視したら、自分には何も残らないって思っているのですから。
沼にはまっている人の多くは、自分を見失っている。そうなると、自分の持っているモノを際限なく対象に差し出してしまう。
そんなときに有効なのは、貯金残高や収入を紙に書きだすことだ。これでかなり冷静になれる。p279
自分の稼ぎだけで何とかなるうちはいいのですけど、借金してまでお金を使うというレベルまで行ってしまう人は、いわば「依存症」になっているのです。それを家族から指摘されても素直に聞けないことが多いので、第三者から指摘してもらうということが効果的だったりするのです。
自分は、この人が好きだからと思っているけれど、実は自分の心の隙間を埋めるためにお金を使ってるってことに気づけたら、この病は終わりますす。でも、1つの沼から抜け出せたとしても、「今度は大丈夫」って油断したら、また別の沼にはまるかもしれないのです。
自己肯定感が低くて寂しい人が多い今の日本では、沼にはまる人は減らないだろうなぁ。
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