『すべての雑貨』 三品輝起 130
東京の西荻窪の雑貨店FALLを営んでいる著者は、雑貨が好きだからこそ雑貨屋を営んでいるのだけれど、昔抱いていた雑貨のイメージと現代の雑貨のイメージが余りにも違っているという所に興味を持っているようです。
昭和のころの雑貨店では、外国では普通に使っているものだけど、日本では物珍しいものを置く店が多かったような気がします。色使いとか、人形の顔つきとか、サイズ感とか、著者がいう所のキッチュ感に魅力を感じていたということを思い出しました。
この本の中で語られていた「文化屋雑貨店」はまさにキッチュの殿堂でした。渋谷のハズレの方にできたあの店があんなにも流行って、周りにお店が増えて、通りに「ファイアー通り」という名前までついてしまったんのです。
文化屋雑貨店で買ったビニール製のバッグを斜め掛けして、わたしは学校に通っていました。それまではショルダーバッグというのは肩にかけるものだったのに、文化屋ができたころから斜め掛けが流行り出したのです。カラフルで、光っていて、チープな感じで、おしゃれなものが溢れていたあの店が大好きでした。
銀座にあった「ソニープラザ」と「アメリカンファーマーシー」には、アメリカの雑貨がたくさんあって、あのカラフルさに心を奪われていたのです。行くたびに、文房具や、お菓子や、化粧品を買っていたなぁ。「ソニープラザ」は「プラザ」になり、「アメリカンファーマーシ―」は日比谷から丸の内へ移転してしまい、似て非なる店になってしまいました。
この世のあらゆるものが雑貨になっているという著者の言葉に、そうだねとうなづいてしまいます。どんなものにもブランド名が付けられ、季節ごとに新製品が登場し、余りにも増えすぎてしまった雑貨たちの中から、わたしが好きなものを見出すのが、困難な時代になってしまったなぁと思うのです。
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