『サエズリ図書館のワルツさん 1』 紅玉いづき 135
さえずり町にあるサエズリ図書館は、利用者に無料で本を貸し出す私設図書館です。ここにやって来るのは、もちろん本が好きな人ばかりですけど、そうではない人がやって来ることもあります。
第一話 サエズリ図書館のカミオさん
ある夜、上緒さんは駐車場に車を留めようとしていて、誤って隣の車にぶつけてしまったのです。車の持ち主に謝らなくてはと思って、建物に入っていったら、そこは図書館だったのです。
第二話 サエズリ図書館のコトウさん
古藤さんは小学校教師です。調べ物があるとこの図書館へやってきます。
第三話 サエズリ図書館のモリヤさん
森屋さんは、この図書館に恨みを持っていました。
第四話 サエズリ図書館のワルツさん
誰かに持ち去られた蔵書を追って、この図書館の「特別保護司書官」である割津さんは、長距離列車に乗りました。
話の中で戦前・戦後という言葉が何度も出てきて、何だろうと思っていたら、第三次世界大戦後の世界の話だったのです。
この本は「図書館」というキーワードだけで手に取ったので、近未来の話だったことにとても驚きました。紙が贅沢品となり、紙でできた本が一部の人のための物という存在になってしまった時代です。電子書籍が当たり前である時代に、大量の本を所蔵し、それを誰にでも無料で貸してくれる図書館があるという物語だったのです。
SFと図書館という組合せが、実に面白い!
今のウクライナのことを思うと、こんな未来がやってくる可能性を否定できないなという思いが強くなりました。
私達は長い間、治らぬ病にかかっています。
それは、「いつか本がなくなってしまうのではないか」と思い悩む病です。
不思議なことに、この病は本が好きな人しかかかりません。本を愛する人だけが、怯え、危惧し、未来を悲観し、惑います。本に馴染みのない人たちは、ただの時代の流れとして、振り向くこともありませんでした。(あとがき より)
わたしも、そう思う人間のひとりです。
それでは、良い読書を
2797冊目(今年135冊目)
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