『ルポ 脱法マルチ』 小鍜冶孝志 122
マルチ商法は、多階層販売方式で成り立つ。口コミで商品を販売する手法で、会員をビジネスの参加者とみなし、商品の購入や、新規会員を勧誘した実績に応じ、勧誘者に報酬が還元される仕組みになっている。ピラミッド型に会員を配置し、上位の会員ほど、還元率が高くなる。p55
ねずみ講はマルチ商法と同様、会員が組織外の人を勧誘し、次々と会員を増やしてくというスキームに共通点がある。一方、マルチ商法は、ルールを守れば合法であるが、ねずみ講は犯罪行為に当たる。ねずみ講はマルチ商法と違い、商品を取り扱わず、主に金銭で成り立っている特徴がある。p75
有名なアムウェイの場合は、ホームパーティーで友達や近所の人を呼んで鍋を売り、その参加者が同じことを繰り返して会員を増やすということで売上を伸ばしていました。クーリングオフの告知などの法律をきちんと行っていれば、合法なのです。
最近のマルチ商法の会員の集め方は全く違っています。駅前で「この辺にいい居酒屋ない?」と声を掛けて、相手の個人情報を聞き出し、時間をかけて友人になっていきます。ある程度時間をかけて親しくなったところで「いいビジネスがある」と誘うのです。進学や就職で実家から離れてひとり暮らしをしているような人が、もっともいいカモなのです。友達になって、一緒に飲みにいけて楽しいという気持ちがあるので、マルチの説明会に何の疑問も持たずに参加し、話に乗ったら運の尽きです。
この本で紹介されていたグループでは、1か月に15万円分の商材を買い、それを売って会員を増やすというシステムです。仕事に専念するためにシェアハウスで暮らすことが推奨されたり、頑張れば必ず金持ちになれると洗脳したりするのです。このノルマを達成できる人などほとんどいません。多額の金を失ったところで初めて、自分はハメられたのだと気づくのです。
この本を読んでいて、特徴的だなと思ったのは、勧誘者たちの行動や態度です。このシステムは安全に金が増えるというのは、なぜなのかいう説明を求めても、きちんと回答をしません。そして飲みに行って楽しい話をしているのに、勧誘者たちの目が笑っていないというのです。
まるで機械のように同じ言葉を発する人達、まるで某カルト教団のようです。
この世においしい話などない、という前提で考えることを知らない人を餌食にするマルチ商法ですが、時代が変わっても形を変えて存在し続けるのは。過去の事件を忘れてしまう社会の問題であるような気がします。
『石田衣良の大人の放課後ラジオ【オトラジ#171】マルチ商法について、たっぷりと語ります』で、この本のことを知りました。マルチ商法の怖さは、いつの間にか洗脳されてしまうことなのだと思います。ある特定の考え方に傾倒することの危うさを感じます。
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