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『ロシアのなかのソ連』 馬場朝子 126

ロシアのなかのソ連

馬場朝子(ばば ともこ)

現代書館

社会主義革命を率い、ソ連を建国したレーニンは、「芸術は人民のもの」として、それまで貴族文化だった芸術を一般の人びとにも普及させようとした。ソ連政府は、国策として芸術振興に力を入れ、音楽学校、バレエ学校などを各地につくらせ、あらゆる村に文化会館を創設した。芸術教育は無料であり、卒業後の就職先も保証される。日本のように「音楽や踊りでは食べていけないよ」ということはなかった。その芸術振興政策によりロシアのクラシック音楽、バレエ、サーカス、児童書、アニメ等は世界最高の水準に達した。p121

 社会主義の良いところは、職業による所得の格差がないこと、そして芸術やスポーツの才能を伸ばすために個人のお金に頼らずに済むというところでした。一般市民にとっても、日常的に芸術に触れることができるという素晴らしい日常を得ることができていたのです。

 ソ連が崩壊して、ロシアという以前よりも小さな国になってしまい、資本主義が流入したことによって貧富の差が生まれました。昔なら具合が悪くなっても医療費はタダだったのに、今はすべてが金、こんなことだったら、ソ連時代の方が良かったなと思う人が増えたのです。

 

2015年、この戦闘(クリミア侵攻)の終結を目指して、ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツの4カ国で話し合いがもたれ、ミンスク合意がなされた。東部の親ロシア派支配地域に特別な地位を与えるというものだったが、当時のポロシェンコ大統領も次のゼレンスキー大統領も、この合意を履行しようとしなかった。p172

 そして2022年2月24日、ロシアはウクライナに侵攻し、プーチン大統領はこう演説したのです。

私たちと隣接する土地に、それは私たちの歴史的領土だが、そこに私たちに敵対的な「反ロシア」が作られようとしている。p175

 ウクライナは、かつてソ連の一部でした。ソ連が崩壊した時にウクライナはいち早く独立しました。けれどもロシア側としては、かつて同胞だったウクライナが離れていくということが理解できないのです。そして、自分たちと敵対するNATOに入るなど、許すことがができない蛮行であると感じてしまうのです。

 著者の友人はウクライナにもロシアにもいます。その人たちはみなお互いを友人であると認識し、戦争が早く終わって、また会いたいねと思っているのです。この後どれだけの時間が必要なのかはわかりませんが、いつか戦争が終わります。その後、あの戦争は何のために起きたのか?と問われても、一般の人にとっては答えようがないでしょう。

 

敗戦国日本は310万人の犠牲者を出した。戦勝国ソ連は2700万人という途方もない死者たちを生んだのだ。それと引き換えに、いくつかの領土を得た。祖国の領土を守り、新たな領土を得ることが、数千万の自国民の命と引き換えにするほど価値のあることなのだろうか。p151

 第二次世界大戦、そしてその後の戦争での犠牲を、ロシアはどう捉えているのでしょうか。戦争に勝とうが負けようが、死んだ人は戻ってきません。若い命を無駄遣いして、ロシアは何を得ようとしているのでしょうか。

 老い先短い老人に国家の舵を握らせてはいけない、という教訓くらいしか残らないと思うのですが。

2788冊目(今年126冊目)

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