『世界一やばい西洋絵画の見方入門』 山田五郎 138
印象派によって西洋画の世界は大きく変わったのですが、その印象派だって、描く人によって全くスタイルが違います。たとえばモネとルノワール、その画風の違いについて、この言葉は実に見事に説明していると思います。
風景を描きたいモネと人物を描きたいルノワール
同じ日、同じ場所でこの2人がほぼ同じ構図で絵を描いているのですが、その絵を並べてみると、これが笑っちゃうくらい違っていて、どんな説明よりもよくわかるのです。p122
モネと言えば「睡蓮」ですけど、初めて見た時にはビックリしました。ボストン美術館だったので、日本の美術館のように遠くからとかガラス越しではなく、実物をドーンと見ることができて、その大きさ、色合い、まるで池のほとりにいるような気持ちになってしまう絵に圧倒されてしまったのです。
モネの睡蓮は数多く描かれているのですが、山田教授のよる「その理由」を想像した文章に、なるほどねぇと思いました。自宅の隣に睡蓮の池を作って、描いた作品が300点以上いうのは、かなり異常な数字ですからね。前妻、カミーユへの鎮魂の「写経」とはねぇ。そう考えると、かなり納得できます。
美術の歴史に名を遺すような人は、ほとんどが絵が上手い人なのですが、そういう人たちにショックを与えたセザンヌやルソーのような、個性的というかヘタウマな絵のパワーの凄さっていうものも、面白いですね。絵が上手いというだけでは超えられない壁を超えるには、そういうパワーが必要だと気がついたピカソは、やっぱり天才なのかな?
こうやって絵を見ていくと、今までと違う楽しさが出てきます。そして、ミュージシャンもそうですけど、芸術家って変な人が多いんだよねってことに気づかされます。その普通じゃないところに魅力を感じるのに、そういう尖った感性をつぶそうとする社会って、何なんだろうなぁ?って思うのです。
2800冊目(今年138冊目)
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