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『大人になってもできないことだらけです』 きしもとたかひろ 152

大人になってもできないことだらけです

きしもとたかひろ

KADOKAWA

 学童の支援員をしている著者のきしもとさんが、子どもたちと一緒に過ごす中で、いろんなことに気づきます。大人は子どもに「あーしなさい、こーしなさい」っていうけれど、それって本当に必要なことなんだろうか?注意の言葉が子どもに伝わっているのだろうか?本当はそんなに言わなくていいのに、自分の機嫌でキツク言ってしまっていないか?なんてね。

 子どもたちと話をしてみると、いろんなことがわかって来るんです。「大きな声を出すなと言われても、自分でそれを押さえられないんだ」と言われて、そこで初めて「そうか、彼はそんな自分に苦しんでいるんだ」とわかったり。「みんなと仲良く遊んでいるフリをするのは疲れる」と打ち明けられたり。それぞれの心の葛藤のことなんて想像もしていなかったということに気づく、きしもとさん。

思っていた言葉を返してもらえない。子どもが言うことを聞いてくれない。そんなときについイライラしてしまうのは「余裕がない」のとあわせて「思い通りに行かない」という要因もあるのだ。
それは、わがままという意味ではなく、僕たちは無意識に自分が都合のいいことを想定したり期待したりしているということ。~中略~
けれどどうかな。考えてみれば、自分の思い通りになることの方が少ないんじゃないだろうか。他人の言動も、電車の発着も、天候も、どんな事象も自分の意のままにはならない。それを存外忘れがちなのだ。P74

 きしもとさん自身、自分だって、大人になってもできないことがたくさんあるんだって、子どもたちに語りかけています。鉛筆をちゃんと持てなくても生きてこられたし。片付けが苦手だけど、なんとかなってるし。大人になってもできないことがあっても、それでいいやん、ってね。

仕事が早い人を見て「自分はなんで仕事が遅いんだろう」ではなくて、「あの人は特別な力を持っているのだ」と思うようにする。
誰かの得意なことを自分ができないからと言って、それは自分の「苦手なこと」ではないのだと。ただ「その人の得意」なのだと。
自己肯定感って、できる自分を誇ることでも、できない自分を認めることでもなく、今の自分の姿をそのまま肯定できることだ。難しいけれど、それができるようになりたい。p98

今までの時代は、みんなが同じことを同じようにできることが求められていた。だから、できないことを欠点と呼んでいた。
けれど、これからの時代は「みんなが同じようにできなくて当り前」でいい。みんなができなくて当り前というのは、できない状態が普通だということ。
そしてそれぞれの「できること」は優れていることではなく、その人の一部として認めていく。
みんなができて当り前のことなんてないんだって知ると、できている人を見たとき同じようにできていない自分に引け目を感じることは少なくなるんじゃないかな。P99

 「できない状態が普通」っていいなぁ。ムリしてできるようにならなくていいし。できるようになりたいと思ってもいいし。こういうことは、あの人が得意だから、必要な時はあの人にお願いすればいいんだって思ってもいいし。

 

苦しみを我慢して厳しくされた分だけ辛抱強くはなるかもしれない。
けれど、その分相手にもその強さを求めてしまうのであれば、自分のしんどさに気がついて誰かに甘えられる方が、その誰かもまた誰かに甘えていける方が、みんながしんどくないんじゃないかな。
少なくとも、相手には相手のしんどさがあることに気づけるから、強さを求めて追い込んだり傷つけたりすることは減るだろう。
強くあることを望んで傷つけあうよりも、弱さを認め合って支え合えたら。甘いと言われようと、僕はそうありたいと思うのだ。p127

 わたしは子どもの頃から「できて当り前」という環境で育ってしまったから、いまだに甘えるのがヘタだなぁって思います。いつだったか、小学校からの友達に、共通の知人のことをボヤいたら「あの子はずっとそういう子だから、気にしなくていいよ。っていうか、今まで気づかなかったの?」と言われて、肩の荷がすぅっと降りたことがありました。ああ、こういう友達がいてヨカッタ。

 つらいとき、悲しいとき、誰かに甘えるって大事なんだねぇ、きしもとさん。

2814冊目(今年152冊目)

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