『戦争とプロレス』 TAJIRI 144
世界のどんなところからのオファーであっても、時間が許せばすべて行ってみるTAJIRI ですが、新型コロナウィルスには手こずりました。そしてロシアのウクライナ侵攻も、大きな壁になりました。それでも、彼は可能な限り海外へ行きます。そして、そこで出会った人々に質問するのです。ロシアやウクライナのプロレスラーは今、どうしているのだろうかと。
ヨーロッパでは新型コロナの影響でロックダウンした町もたくさんあり、交通も止まり、プロレスなどの興業はことごとくストップしました。でも、立ち直りは驚くほど速いのです。それよりも、ロシアがウクライナに侵攻したことによる物価上昇の方がずっと大変な問題だと感じている人が多いようなのです。
TAJIRIは海外へ遠征できるようになったとたんに旅立ちました。そして空港に人がいないことに驚き、航空機がガラガラなので、座席で横になって寝られることに喜び、到着した町で旧知の友との再会します。そして、こんな大変な環境でもみんな力強く生きていることに感動してしまうのです。
前作「プロレス深夜特急」では新人だった斎藤兄弟が、今回はたくましくなって再登場しています。着実に育っている彼らと行動を共にしてTAJIRIは、これからのプロレス界のことをいろいろと考えます。
初めてプロレスを見るような人には、もっとわかりやすいプロレスを見せることが大事だと何度も語っています。悪役とヒーローの闘いというわかりやすいストーリーこそがプロレスの本質なのだというのです。子どもが多く集まる会場では、彼らがカッコいいと思うような見せ方をしなければと心がけています。
日本のプロレスでは玄人好みの技の応酬がウケているけれど、結局は一部のマニアばかりが見るようなものになってしまうんじゃないかと危惧し、子どもの観客がいない状況というのは、本当はまずいんじゃないかとTAJIRI言っています。
地方プロレスを最前列で見ていたライガーさんのように、一流の人ほどプロレスが大好きだし、未来のことを考えているんですね。ラ・パルカさんとか、スペル・クレイジーさんとか、様々なプロレスラーの方が登場してくるところが、実に楽しいです。そして、黒潮"イケメン"二郎くんが元気そうでなりよりでした。
最後に登場したフランシスコ・アキラくんの物語には、ちょっと涙がこぼれそうになってしまいました。プロレスにはいろんなドラマがあるんだなぁ。
2806冊目(今年144冊目)
追記:プエルトリコのバイヤモン、フォアン・ラモン・ルブリエル球場(ブルーザー・ブロディが亡くなった場所)にもTAJIRIさんは行ってたのね。
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