『バカの災厄』 池田清彦 161
「バカ」は自分の信じるものは、「正しくて確かなもの」だと思い込んでいて、その考えに固執している。だから、それが「いい加減であやふやなもの」だという現実をまずは受け入れるのだ。それは恣意的に決められたもので、絶対不変の真理などではないということも理解する。ここまでくれば、あと一歩で「バカ」から抜け出せる。P61
「賢い人」というのは、相手の主張を「とりあえず、この人のなかでは正しいと思っていることなんだ」と受け入れることによって、他人には自分と全く違う合理性や考え方があるということを理解して、それをうまくすり合わせながら生きて行く。つまり「共存」の道を探ることができるのだ。
実はこれこそが「コミュニケーション}の本質だ。「他人とうまくコミュニケーションがとれません」なんて悩んでる人もよくいるけれど、実はそんなに難しいものじゃない。世の中が「いい加減」だという事実を踏まえて、相手の同一性を「とりあえず」受け入れて調子を合わせていくだけで十分なんだよな。P67
よく人は「本当の私」とかいうけれど、「リアルな自分」は時々刻々と変化しているわけで、多少なりとも同一性を孕む「自分」というものは、社会が「私」という存在をどう思っているか、つまりは「他人の目から評価された私」なのだ。そういう表面的なところが褒められたり、みとめられたりしているだけだから、べつに「自分の存在」が誰かに承認されたわけではない。~中略~
他人が褒めたりけなしたりするのは「見せかけの自分」に対してであることがわかっているうちはまあいいのだけれど、こういうことにのめり込み、ずっと続けていくと、「見せかけの自分」と「リアルな自分」の区別ができなくなり、徐々に精神が不安定になっていく。P133
SNSで見せつけられる他人の幸福を、良かったねぇと思えるならいいけれど、どうしてわたしだけ幸せじゃないんだろう?と思い始めたらどうにも止まらない、不安定な精神を抱えた人はどこへ行く?自殺する人が増えているのは、こういうことが原因なんだろうか?
この本の中に「バカ」という言葉は何回出てくるのだろう?どうしてそんなに連呼するのだろう?と思いながら本を読み進めていくうちに、池田さんが言いたいことが段々わかってきた。世の中には信じられないくらい大勢の「バカ」がいる。なぜなら、その方が都合がいい人がいるからなのだ。
そもそも、現在の「バカの大量生産教育システム」というのは、政権が「思いのままに政局を運営しやすいように、羊のような国民をつくりたい」ということで推し進められてきたものなので、「教育改革だ」と言い続け、さも教育を改善しているかのようにふるまいながら、どんどん「改悪」を重ねてきたというのが実情だ。P202
バカを大量生産するシステムは見事に稼働しました。だからこそ、日本の成長は止まったわけですよ。技術大国とか、教育水準が高いとか、間違った認識を持っているからこそ、プライドだけ高くて現実について行けない人が増えちゃって、どうなっていくんだろう、ニッポン?
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