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『うちの父が運転をやめません』 垣谷美雨 176

うちの父が運転をやめません

垣谷美雨(かきや みう)

角川文庫

#カドブン夏フェア2023

 78歳のドライバーが事故を起こしたというニュースをTVで見ていた雅志さんは、ドキッとしました。自分の父も78歳で、この間帰省した時「運転免許を返納しないか?」と話したけど、全然聞き入れてもらえなかったのです。それどころか、駅からのバスだって前より本数が減ったし、運転できなくなったら、どうやって買い物に行くんだ?と反論される始末。心配だけどどうしていいのかわからずモヤモヤするだけなのです。

 雅志さんは妻の歩美さんと高校生の息吹くんとの3人暮らし。54歳だから定年まであと10年位。両親のことは心配だし、家のローンも残っているし、息子は息子は大学受験だし、悩んでばかりの毎日でなんだか息が詰まりそうです。

 

 雅志さんは悩んでいるだけで何も決められません。決して無責任なわけではないけれど、自分一人で決めてはいけないとか、安全な方を選ぼうとか、揺れ続けています。だから、読んでいるこっちもイライラしてきます。「あなたは、どうしたいの?」という感じです。

 後半、ある決断をしてから雰囲気が変わって来ます。

 最初は「お父さんが運転をやめないこと」が問題だと思っていたのだけれど、実は「お父さんが運転をやめられるようにフォローすることができない自分」が問題だと気がついたんです。

 

 雅志さんはそれ以外にもいろんなことに気がつきます。息子に対しても、今までちゃんと向かい合ってこなかったなぁと気づいたり、自分の両親のためと思ってやっていることが、過疎の地域の人たちの役にもたつのだと気がついたり。

 今までの自分は理屈ばっかり考えていたんだなぁ。現実に立ち向かうってことが、問題解決の決め手なんだって気が付けて良かったなって思いました。

 地に足をつけて生きるってことに気づけたから雅志さんも息吹くんも幸せになったけど、奥さんの歩美さんはこれからどうするんだろう?

2838冊目(今年176冊目)

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