『時かけラジオ』 成田名璃子 155
ローカルラジオ局「鎌倉なみおとFM」のDJトッシーはスランプです。自分のしゃべりが上滑りしているような感じで、ダメだなぁ自分って思います。缶チューハイを片手に、放送が終わった後の放送局のマイクの前で、「ラジオがはねたら」という番組を勝手に作ってしゃべりだしてみたら、なぜかリスナーから電話が入ってきたのです。おかしいなぁ、オンエアされていないはずなのに。
電話をかけてきたリスナーとの会話がなんだか噛み合わないんです。相手が言っている単語がよくわからないことばかり。話しているうちにわかったのは、トッシーは1985年にいるのに、リスナーがいるのは2021年、なぜか未来の人と話をしているってこと。
36年も経つと、世の中って随分変わっちゃっているんだけど、人の悩みってのは大して変わりません。「三回転半ジャンプさん」は友達との関係の話、「ラジコンカー君」は母親の再婚相手を受け入れられないという話、トッシーはそんな話を聞きながら、この人をどうやったら助けられるのだろうと考えます。
なぜタイムスリップした会話が成立してしまうのかは謎のままですけど、かわいい猫が登場するところは「夏へのとびら」へのオマージュなのでしょうか。
身近な人には言えないようなことでも相談できてしまうラジオという存在は、寂しい心のオアシスなのかなぁ。
孤独な人が多い今の時代に必要なのはSNSじゃないよねって思うのです。
この4篇が収められています。
第一話 ぶりっこの憂鬱
第二話 ファミリーゲーム
第三話 人生、波あり。
第四話 今、この時。
2817冊目(今年155冊目)
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