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『アンチ整理術』 森博嗣 156

アンチ整理術

森博嗣(もり ひろし)

講談社文庫

社会生活を送る人間にとっては、秩序というモノが必要であり、それは主として、支配側の思想である。こうあるべきだという規範を示し、それに大衆を従わせることで、力による支配を行った。支配者から見て、散らかっているのは危険な状況であり、整然とかたづいていれば安泰となる。だから、そうなるように大衆を指導する。このように、秩序が重んじられるのは、人々が場所や道具を共用し、大勢で共同作業を行う必要があったからであり、社会的な秩序の維持が理由なのである。P29

 森さんは、自分の研究室や書斎は誰かと共有して使用している場所ではないから、不特定多数のために整理する必要はないとおっしゃっています。たまに気分転換として掃除したり、不要なものを捨てたりすることはあるけれど、片づけをする時間があったら研究や執筆時間に当てたいのだというのです。

 他人から見たらグチャグチャに見えるかもしれないけれど、その状態が自分にとって一番わかりやすい状況であるのだから、それでいいのだ。断捨離などと言う言葉は自分には不要であるともおっしゃっています。

 

どうして、世の中の人の多くは、このような周囲から降りかかる言葉に反応し、影響を受けるのだろうか?
~中略~
いずれにしても、みんなと同じ気持ちでいたい、みんなと同じことをしていたい、という意識があるように観察される。僕自身は、この感覚が希薄なので、余計にそれを感じるし、同じだと何が良いのか、といつも不思議に思っているところである。
さらに、この「みんなと同じ」という意識が、他者と自分を比較する思考を促す。なにかというと、人と比較してしまう自分に、あるとき気づくだろう。
自分の感情のほとんどが、他者に認められることや、他者との比較によって生じている。と考えている人は実に多い。他者に認めてもらえなければ意味がない。人よりも上でなければ成功とはいえない。そんな価値観に支配されている。ネット社会になって、これが顕著に表れるようになった。ネットが、他者からの承認、他者との比較のためのツールになっているからだ。P143

 森さんが編集者の方と対談している中で、「どうしたら〇〇ができるようになるのか」という「方法論」について質問されたところが実に面白かったです。

 みんな「楽にできる方法を教えて」ということばかり言うけれど、本当にやってみたいと思うなら、とにかくやってみるしかないのです。他人が考え出した方法論は、その人にとっては最善策かもしれないけれど、それをマネして同じようにできるかどうかはわからないのです。

 それに、それをやろうと思った動機は何なのでしょう?それをカッコいいと思ったから?誰かがやっていたから?その資格を取ったら転職に有利だと思ったから?

 よく考えてみたら、世間での評判とか、普通の人ならこれくらいはできるだろうとか、その程度の動機しかなかったのかもしれません。

 たとえば、アイドルのヘアスタイルを真似てみたり、流行の資格を取ろうと勉強したとしても、1年後にはどうなってる?また別のことが流行っていて、そっちに気を取られてしまうのかもしれません。そんなものに振り回されているだけでいいのかなぁ?

 

 森さんは、「とにかく必死に考えろ」と言うのです。気持ち悪くなるくらい考え、やってみる。上手く行かなかったら、また考える。そうやって得たものは、間違いなく自分のものなのだから、そこに意義があるだろうと。

 つまらない考えや情報が頭の中にたくさん詰まっているから、そこから逃れられなくなってしまうのだ。必死に考えて、いらない考えを捨てることが大事なんだ。整理すべきはモノではなく、頭の中なのだという森さんの意見に、思わず「その通りです」とうなづいてしまいました。

2818冊目(今年156冊目)

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