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『運び屋円十郎』 三本雅彦 198

運び屋円十郎

三本雅彦(みもと まさひこ)

文藝春秋

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・運びの掟
 一つ、中身を見ぬこと。
 二つ、相手を探らぬこと。
 三つ、刻と所を違えぬこと。

 円十郎の仕事は、特別な手紙や小さな荷物を預かり、指定された日時に指定された場所へ置いてくる仕事です。

 仕事の内容は松竹梅というランクがあって、円十郎は通常「竹」の仕事をしているのですが、最近は難易度が高い「松」の仕事も増えています。

 

<運び屋>への依頼は安くない。多額の金を払ってでも運んでほしいという荷物は、別の誰かにとっても価値のある物だ。それを横取りしたいと願う者は、<引取屋>を頼る。

 時は幕末、幕府を守ろうとする勢力と幕府をつぶそうとする勢力がせめぎ合っています。ですから秘密裏に渡したい荷物を運ぶ円十郎のような人たちと、その荷物を横取りしようとする人たちの争いが生まれたのです。

 円十郎の家系は忍びの技で生きてきた家です。その技を駆使して敵から逃れるのですが、これまでとは全く違うレベルの敵に遭遇し、自分の力不足を感じることが増えてきました。

 

 円十郎は、江戸の町を駆け抜ける忍びの者という、今までに出会ったことのないタイプの主人公です。様々なことに悩み、自分の想いを上手くことばにできないところは、まだ20歳という若さのせいでしょうか。誰が敵か味方かわからない世界に生きるというのは、とてもつらいことです。そんな世界で頑張る円十郎を応援してくれる人が何人もいるのが心強いです。

 最初は敵として登場した兵庫が、実はどこかしら気が合う人間であるというあたり、スペンサーシリーズのホークのような感じがして、もしこの作品の続きがあるとしたら、また登場してきそうな気がします。

 

この5篇が収められています。

・運び屋円十郎
・百両の荷物
・幽世(かくりよ)の蛇
・わかれ路
・手のぬくもり

#運び屋円十郎 #NetGalleyJP

2860冊目(今年198冊目)

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