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『不道徳ロック講座』 神館和典 203

不道徳ロック講座

神館和典(こうだて かずのり)

新潮新書

 最近、ワイドショーで芸能人の不倫や薬物所持がよく話題になっていて、保釈されて警察から出てくる人が「すいませんでした」って頭を下げている図をよく見るのですが、あれって実に日本的だなぁっていつも思うんですよ。

 「ご心配やご迷惑をおかけしました」って判で押したように言うけれど、何なんだろうねぇ?わたし、あなたのこと心配もしてないし、迷惑だと思ってもいないし。そもそも、あなた本気で悪いことをしたって思ってる?としか思えません。

 

 ロックミュージシャンの話で必ず登場するのは「セックス・ドラッグ・アルコール」の話ですけど、彼らは世間に対して謝るなんてことは絶対にないです。そもそも、反省なんかするまでもなく、過剰摂取で死んじゃう人が多いし。家族や友人に迷惑をかけたって気づける人は立ち直れるしね。いずれにせよ、彼らが世間に謝るなんて考えられません。こういうことは、あくまでも個人的なことなんですから。

 

 この本を読んでいて、へぇ意外だなぁって思ったのは、ザ・フーのキース・ムーンがいつもラリってて危ないから見張っていたのが、近所に住んでいたストーンズのビル・ワイマンだったというお話。意外とみんな仲良しだし、友達だって言う意識が高いのかなぁ。

 

本を書いて、いくつか気づいたことがある。
その一つは、バンドのフロントマンや中心人物はほかのメンバーよりもタフだということ。

 ドラッグ漬けだったはずだけど、今は元気なキース・リチャーズ、中年以降は健康オタクのミック・ジャガーのローリング・ストーンズ。

 他のメンバーはドンドン入れ替わったけど、ジーン・シモンズとポールスタンレーだけは不動で、あくまでもビジネスとしてのバンド活動を続けているキッス。

 難聴になっても頑張ってるピート・タウンゼントと、キース・ムーンが死んだときに号泣していたロジャー・ダルトリ―のザ・フー。

 ポール・マッカートニーも、スティングも、ジミー・ペイジも、悪いことをもちろんしてきたけど、ほんとにタフだね。

 そして、「セックス・ドラッグ・アルコール」の三冠王ともいえるエリック・クラプトンは、よくぞ生き残ってきました。かなりヤバいところまで行ってるんだけど、必ず助けてもらえる運命なのかな、不思議なくらいみんなから愛されてます。

 薬物・アルコール・たばこ依存症等の更生施設クロスロードセンターを作ったのは、生き残った自分の使命はそこにあると思ったからなのかなぁ。

 

 アーティストって、とんでもないことをしでかすのも芸の内ってところがあるから、一歩間違えたら死と隣り合わせになりやすいのでしょうね。でもね、それくらいはじけた人だからこそ何かを成し遂げることができるとも言えるわけで、タフじゃなけりゃ生き残っていけないのは当然だなぁと思います。

 そう考えると、ホイットニー・ヒューストンは死んじゃって、マドンナやシンディ・ローパーが生き残ったのは、当然なんだなと思えてくるのです。

 

 この本ではロックミュージシャンのみを取り上げていますけど、その前の時代のジャズ界には薬物中毒が大勢いたし、そのまた昔のクラシック界にもワーグナーのようなとんでもない人がいたのです。いつの時代でも破滅的な部分が多くて常人には理解できないようなことをしでかすけれど、すばらしい芸術も作り出す人がいて、世界は変わっていくのです。

2865冊目(今年203冊目)

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コメント

私の中ではエリック・クラプトンって太宰治とダブって仕方がないのです。私生活の葛藤や浮き沈みをそのまま赤裸々に作品として世に出してしまう。二人とも酒・麻薬・女にと、ミュージシャンや小説家としての才能が無ければ本当にグダグダのダメ男です。放っておけない魅力があるのでしょうか? 日本のファンはクラプトンのどの部分が好きなのでしょう?(私は1970年までのクラプトンが好きです)。

生き残っているロックスターたちはビジネス価値があるから、彼らをブランド・マネージする取り巻き連中が優秀なのでしょうね(ミックやイーグルスの連中は彼ら自身がビジネスマンだと思いますが、、、)。

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