ブログ内検索


  • ダメでもいいからやれ。
    体験もしないでお前ら、
    すぐに「ダメだ」って言うのは、
    学校で聞いただけの話だろう。
    やってみもせんで何を言っとるか
    (by 本田宗一郎)

読書Love!

  • 本が好き!
  • NetGalleyJP
    プロフェッショナルな読者
    グッドレビュアー 100作品のレビュー 80%

« 『あつめる!はこぶ!せいそうしゃ』 片平直樹、岡本よしろう 205 | トップページ | 『みつばの泉ちゃん』 小野寺史宜 207 »

『吉原手引草』 松井今朝子 206

吉原手引草

松井今朝子(まつい けさこ)

幻冬舎文庫

第137回(2007年上期)直木賞受賞作

 吉原で働く人や吉原へ通う人へ質問を重ねている人がいます。その人がどんな人なのかは最後までわかりません。聞かれた人が語る吉原での生活、しきたりなどを聞くうちに、よそとは全く違った世界がここにあるということが分かってきます。

 ある人に話を聞き、その人から紹介された別の人に話を聞くという繰り返しなのですが、それぞれの言い分が同じようでもあり、違うようでもあり、それぞれの立場のせいなのか、それとも性格の問題なのか。

 

・引手茶屋 桔梗屋内儀 お延の弁
・舞鶴屋見世番 虎吉の弁
・舞鶴屋番頭 源六の弁
・舞鶴屋抱え番頭新造 袖菊の弁
・伊丹屋繁斎の弁
・信濃屋茂兵衛の弁
・舞鶴屋遣手 お辰の弁
・仙禽楼 舞鶴屋庄右衛門の弁
・舞鶴屋床廻し 定七の弁
・幇間 桜川阿善の弁
・女芸者 大黒屋鶴次の弁
・柳橋船宿 鶴清抱え船頭 富五郎の弁
・指切り屋 お種の弁
・女衒 地蔵の伝蔵の弁
・小千谷縮問屋 西之屋甚四郎の弁
・蔵前札差 田之倉屋平十郎の弁
・詭弁 弄弁 嘘も方便

 吉原へ売られてくる女の子は普通は10歳にも満たない子ばかりです。そんな幼いころから吉原の風習を叩き込むのです。でも、人気の花魁だった葛城がここへやって来たのは13歳、この歳からではとうてい売れっ子の花魁になるのは無理だろうとみんなが思っていたのに、彼女は秀でた美貌と頭の良さで、頭角を現したのです。

 様々な話を聞いていると、吉原ならよそよりましだからここにしてくれと頼んだ人がいたり、花魁はいわば個人事業主で、着物や調度などすべてのものを自前で用意していたとか、どれもこれも驚くことばかりです。

 

ああいう連中は一口でいって世間が狭いから、世の中にゃ侍ほどえらいもんはないと思い込んでるけど、なにせこのおひざ元じゃ田舎大名のかごを見かけたって頭一つ下げるわけじゃなし、侍にもピンからキリまでぇのはだれしも承知だからね。
世間知らずってのはたいがい臆病で、そのくせ厚かましいんですよ。ひとりだと意気地がなくて吉原にも来れない連中が、座敷でずらっと何人も並んだらもう遠慮もへったくれもない。P204

 女芸者のこんな言葉から、江戸っ子の気持ちが感じ取れます。お侍だからってだけで偉いと思ったら大間違いだよ!こういう感じって、いまだにどこかのセンセイたちには残ってますよね。下品な奴が嫌われるのは、いつの時代も同じです。

 それにしても、ああいう結末になるとはねぇ、ビックリするやら、あっぱれと思うやら!

 先日の第169回直木賞を受賞した「木挽町のあだ討ち」もそうでしたけど、本人が登場せずに周りの人たちが語るある人の評判っていう話の持って描き方はいいですね。本人も気づいていなかったかもしれない心の動きまで見えてきて面白いなぁ。

2868冊目(今年206冊目)

« 『あつめる!はこぶ!せいそうしゃ』 片平直樹、岡本よしろう 205 | トップページ | 『みつばの泉ちゃん』 小野寺史宜 207 »

日本の作家 ま行」カテゴリの記事

文学賞」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『あつめる!はこぶ!せいそうしゃ』 片平直樹、岡本よしろう 205 | トップページ | 『みつばの泉ちゃん』 小野寺史宜 207 »