『師弟百景』 井上理津子 186
ピーター・バラカンさんのラジオ番組「The Lifestyle Museum vol.787」に登場された井上さんのお話が面白くて、この本を読んでみました。
職人の修行というと、厳しい、怖い、給料がもらえないというイメージがありますが、最近の職人さんの師弟関係は必ずしもそうではないようなのです。お給料がない、あるいは安いのでバイトをしているという人はいますけど、この本に登場する弟子のみなさんは、それを苦にしない人ばかりです。なぜなら、みなさん良い師匠についているからなのです。
最初は掃除からというのも、そこから学ぶことがあるということに気づける人は残っていけます。庭師さんの弟子にしてもらった人は、まずは「地堀り」という木を掘る仕事からだったそうです。どうしてこんなことばっかりするのだろうと最初は思っていたのですけど、木の根っこがどう生えているのかを学ぶことから庭師の仕事が始まるということを理解してからは、仕事が楽しくなったと語っています。
仏師、左官、文化財修理、宮大工、洋傘職人、硯職人、茅葺き職人など、そもそも、どうしてその職業に魅力を感じたのか、どうやって師匠を探したのかなど、実に興味深いお話が続きます。
職人仕事は、かなり危険が伴うことも多いので、そういうことに関しては師匠が厳しくするのは当然のことです。といっても、ただ怒鳴るのではなく、「こういう危険があるから、正しい手順でやろうね」という教え方をしているのが現代風なのかもしれません。そうやって育てられた職人さんたちが、その技術を未来につないでいくのでしょうね。
2848冊目(今年186冊目)
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