『あやし』 宮部みゆき 188
江戸時代、お金持ちの家でなかったら、長男以外の子どもはよそへ働きに出されていました。貧乏でも両親がいればいい方で、幼くして親がいなくなってしまったら、どこかへ奉公へ出されるのは当り前だったのです。子守奉公、女中奉公、病気の人やご隠居さんの身の回りの世話をする奉公もありました。
奉公人を紹介する口入屋は、今でいえば職業斡旋業ですけど、今よりも細かいことに気を使っていたのです。あそこの女将さんは細かいから、辛抱のいい子でないとだめだとか、この子は一生懸命に働いていたのにお店がつぶれてしまって困っているので、いい勤め口をまた探してやらなくちゃなと気遣ったり。
奉公先に怖い人がいたり、そこの家に得体のしれないものが憑りついていたり、そういうことが起きるのは「鬼」のせいなのでしょうか。人間の浅ましさや妬みなどが「鬼」の姿を借りているのだとしたら、それはわたしのすぐ隣にいるかもしれないという気がします。
どの物語も、怖いというより、悲しいとか哀れとかを感じてしまうのです。
この9編が収められています。
・居眠り心中
・影牢
・布団部屋
・梅の雨降る
・安達家の鬼
・女の首
・時雨鬼
・灰神楽
・蜆塚
2850冊目(今年188冊目)
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