『隠居すごろく』 西條奈加 195
巣鴨の糸問屋の六代目主人だった徳兵衛さんは、還暦を機に隠居しようと決めました。店は長男に渡し、空き家になっていた百姓家で隠居生活を始めます。元々マジメが採り得で口うるさい旦那さんだったので、家族は「みんなひとりで勝手にしなさい」という感じですが、孫の千代太だけは徳兵衛さんのところへ毎日やってきます。
かわいい千代太がやって来てくれるのはいいのだけど、そのたびに犬を拾ってきたり、猫を拾ってきたり、しまいには近所の子どもを連れてきてご飯を食べさせてくれと言い出す始末。そのお願いは嬉しくもあり、迷惑でもありと思いつつも、千代太のペースにはまってしまったのです。そして、最初はワガママだの、迷惑だのと思っていた彼の行動を、少しずつ理解できるようになってきた徳兵衛さんは少しずつ変わっていきます。
千代太が家へが連れてきた貧しい子供の母親が、組紐の職人として働けるように協力するようになったり、子どもたちが手習いできるように部屋を貸したりするうちに、自分にこれまで足りなかったことに気づき、やっぱり商売が好きだと気がつくあたりから、徳兵衛さんは老後にこういう楽しみを見つけられたことを喜んでいるようで、こっちまで楽しくなってきました。
老後はおとなしく隠居というのも、ひとつの考え方ですけど、千代太くんに教わった「人の役に立つことをしよう」ということが徳兵衛さんにとってはしっくりきたのかもしれませんね。
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