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『いのちの車窓から』 星野源 232

いのちの車窓から

星野源(ほしの げん)

角川文庫

#カドブン夏推し2023

10年ほどエッセイを書き続けて気づいたことですが、文章のプロとは、ありのままを書くことができる人ではないかと思います。(あとがき より)

 自分が思ったことを正確に相手に伝えるのは、意外と難しいものです。「自分はこう思って言ったのに相手がわかってくれない」とみんなが言うけれど、それは伝える側の力量不足なのだと源さんはわかっています。だから、ありのまま(思ったとおりのこと)を書けるのはプロだと源さんは考えているのでしょうね。

 メールの文章を書くのがヘタだったので、それを克服するには文章をたくさん書くしかないと考えた源さんはエッセイを書くようになりました。細野晴臣さんの影響で始めたマリンバもそうだけど、練習することで自分のものにすることができるという感覚は、やっぱりミュージシャンだからなのかなぁ。

 この本の「細野晴臣」の項で語られていた話から、2022年のお正月に放映された「細野晴臣のイエローマジックショー2」で、源さんがあんなに嬉しそうにマリンバを演奏していたわけが分かって、なんだかとても嬉しくなってしまいました。これが、彼の原点だったのですね。

 

自分が小さい頃にそんな言葉はなかったけれど、どれだけ「イタい」と言われようと、「中二病」とバカにされようと、そんなつまらない言葉には負けず、人はどんどん妄想すればいいと思う。現実を創る根本は、想像力である。P183

 両親の不仲を直視したくないから想像力の世界へ走った子ども時代。余計なことを言って浮いてしまった自分を目立たせないために妄想の世界へ逃げた10代。

 新しいことは想像力から生まれるんだから、想像力のないアーティストなんてありえないんだもの、そんな子供時代も無駄じゃなかったんだね、源さん。

 

 大好きな音楽やラジオ番組を録音して、それを聴きながら通学していた学生時代の話は、わたしもそうだったなぁって思えて、大好き!

 マルチな才能を持った源さんの活躍は、これからもずっと続くんだろうなぁ。

2894冊目(今年232冊目)

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