『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』 ブレイディみかこ 219
ロンドン・オリンピックの2年後、オリンピックパーク用地だったロンドン東部のホームレス・シェルターを追い出されたシングルマザーたち(FOCUS E15マザーズ)が、公営住宅占拠運動を起こした。彼女たちの運動はオリンピックに端を発する下町のジェントリフィケーションへの抵抗であり、反緊縮運動の象徴でもあった。さらに同運動は2014年のカーペンターズ公営住宅地の空き家占拠・解放活動へと繋がっていく。(書籍紹介より)
公営住宅占拠運動をしているシングルマザーたちを見て、ロンドン駐在員の史奈子が感じたのは、こんなことしていいの?という違和感でした。
でも、元カレの幸太が住宅占拠運動を取材し始めてから、運動をしている人たちと親しく話すようになって、少しずつ彼らの行動が理解できるようになって、史奈子の考え方も少しずつ変わってきました。もしかしたら「自分は何もしないで勝手に諦めているばかりの人生を送ってきたのかな」ということに気づいたあたりから、ちょっと違う感じになってきました。
幸太が建物の修理などの手伝いをするようになった辺りから、わたしの頭の中に流れてきたのが Bob Marleyの「Get Up, Stand Up」なのです。「Don’t give up your right」という気持ちが、日本人には足りないのかな?いや、ないのかもしれない?
ジェントリフィケーション(gentrification)–都市において、低所得の人々が住んでいた地域が再開発され、お洒落で小ぎれいな町に生まれ変わること。「都市の高級化」とも呼ばれ、住宅価格や家賃の高騰を招き、もとから住んでいた貧しい人々の追い出しに繫がる。
ロンドン・オリンピック後にこういうことが起きたのだけれど、日本だって同じだと思う。オリンピック村だったところは高級マンションとして建設中だし、神宮外苑の再開発だって、築地市場跡地のすぐ横を通る道路の話だって、結局は「お金、お金」。「少子化対策」も「子どもの貧困問題」も「環境問題」も本気で考えちゃいないお役所が、おいしいことを提案するデベロッパーの言いなりになって再開発三昧してるだけだもの。
(ブライトンへ)ロンドンからリッチ層がたくさん引越してきてるんだよ。週に1回とか2回とかロンドンの会社に出勤すればいい身分の人たちが、海のそばでくらしたいとか言って家を買ったり借りたりするから、家賃がバカ上がりして、ロンドンとそう変わらないレベルの菜ッている。英国で最も平均賃金が低い街の一つなのに、金持ちが引っ越してきて家賃や物価をおしあげている。
この物語はフィクションだけど、限りなく現実を教えてくれる。お金のない奴は田舎へ行けと役所も、事情を知らない世間の人も言うけれど、そこに仕事があるの?そこに人が住む環境があるの?自分が生まれ育った町(都会)に住み続けようと思うことがいけないことなの?
ブレイディみかこさんらしい、地べたで生きる人たちの物語は、とても面白かった。そして、戦うことを忘れたわたしたちに、ちゃんと自分の意見を言おうよと語りかけてくれた。
「Don’t give up your right」を思い出させてくれて、ありがとう。
そして幸太が言っていた「人間は支配されたほうが楽だと思う部分があって、何も考えなくなる。」そこから逃れようとするということが「アナキズム」なのだという言葉が、とっても心にしみました。
そして、あの声が聞こえてきました。「I wanna be anarchy !」
#リスペクト #NetGalleyJP
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