「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」展図録 230
甲斐荘楠音のことを初めて知ったのは「ぼっけえ、きょうてえ」(岩井志麻子)でした。表紙に描かれていた「横櫛」という絵がとても不思議でならなかったのです。女性を描いた日本画で、こういう感じというのは見たことがなくて、いったいどういう人なのだろうと思ったのです。
「女人讃歌 甲斐庄楠音の生涯」という本で、彼の生涯を読んでいくと、何と時代劇映画の衣装のお仕事をしていたのです。子どもの頃に父と一緒にTVで見ていた「旗本退屈男」の衣装を手掛けていたということにとても驚きました。
今回の展覧会では、その時の衣装が何点か映画ポスターとともに展示されており、その絢爛豪華さにビックリしてしまいました。主演の市川歌右衛門さんは、旗本退屈男シリーズを製作していた東映の重役であったこともあり、衣装にはいくらお金をかけてもいいということだったようです。
歌右衛門さんのご子息の北大路欣也さんや大川橋像さんの衣装もステキでしたけど、大友柳太朗さんが演じた丹下左膳の白地に黒い墨の文字だけで構成された着物が実にかっこよかったです。
この展覧会の片隅で「旗本退屈男」の映画が流されていて、壮大なチャンバラシーンを久し振りに堪能しました(笑)
楠音さんのスクラップブック、女性の着物を着た写真など始めて見るものも多く、何と多彩な方だったのかと驚くばかりでした。そして、映画のワンシーンに茶人の役で出演したこともあるというパネルを見て、この映画を見てみようかなとも思っています。
「横櫛」をはじめ、女性を描いた絵画が多数展示されていたのですが、どの絵を見ても着物の柄が素晴らしいのです。顔はキレイなものもあれば怖いものもあるのですけど、着物はどれも美しいのです。その情熱が映画の衣装製作にも生かされたのでしょうね。
2893冊目(今年231冊目)
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