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『ロックの正体 歌と殺戮のサピエンス全史』 樫原辰郎 227

ロックの正体

歌と殺戮のサピエンス全史

樫原辰郎(かしはら たつろう)

晶文社

ご存じのように、ビートルズは組織構成員が四人しかいないのに、世界的な成功をおさめた。たった四人で世界を永遠に変えてしまったのである。それはもう大勢の人たちが右往左往した結果、大勢の人たちをギロチンで処刑することになったフランス革命と比べたら、コスパという面で大違いである。P51

外国語を学習するのは難しい作業だが、外国の音楽に魅了されるのは簡単である。我々は素晴らしい音楽に触れた際には、一瞬で魅了される一方で、どんなに素晴らしい言葉であっても、自分が知らない言葉で発せられた言葉には心を動かされることがない。P67

 そう、その通り。音楽は一瞬で心を掴む。今まで見たことも聞いたこともない音楽に心を奪われ、それが一生続くのです。

 

後にバンドを脱退し、ソロになったオズボーンはクワイエット・ライオットにいた若くて有能なギタリスト、ランディ・ローズを抜擢する。ローズは飛行機事故によって悲劇の死を迎えるが、若きギターヒーローとして伝説的な存在となった。
ヴァン・ヘイレンのボーカルだったディビッド・リー・ロスがバンドを脱退してソロになった際にはスティーヴ・ヴァイという若手のギタリストをバンドに招聘している。オズボーンもリー・ロスも、その後は元いたバンドに戻ったりしている。二人ともバンドのフロントマンである自覚こそあったものの、ステージの上で歌う自分の横にはギターヒーローが必要であることをよくわかっていたのだ。スターであるボーカルと、そのバックバンドという構成ではロックにならないのである。P243

 バンドで有名になって、ボーカルが独立というのはよくあることだけど、ボーカルとバックバンドではロックにならないのは確かなのです。やっぱりロックというのは人と人とが作り出すものがあって、バックバンドというカラオケで歌っちゃダメなのよ。

 

チャーリー・ワッツが亡くなった時にキース・リチャーズが、酔っぱらったミック・ジャガーが電話で失礼なことを言ったので怒ったワッツが髭をそり正装をしたうえでミックをぶん殴ったというエピソードを披露した。これは80年代のことらしい、殴った方と殴られた方は、この時点で20年以上ともに仕事をしてきたわけである。 (中略)
ローリング・ストーンズの場合、ボーカルの社長が良くないことをすると、ドラムのチャーリーが正装して社長を殴りに行くのである。ロックバンドというのは資本主義的なシステムに依存しながら、ドラムよりボーカリストの方が偉いというような縦割りの価値観を拒否しているわけである。その根源にあるのはバンドが近所の友達や、その兄弟が集まってできた最小限の共同体だからだ。P248

 ストーンズのステージを見ていてわかるのは、ミックが一番偉いわけじゃないってこと。ミックが何かをしゃべっていても、キースがジャーンってギターを鳴らすとチャーリーやロンはニコニコしながら次の曲を始めちゃう。ミックはビジネスマンとしては優秀だけど、バンドの中ではリーダーではないというところが絶妙なバランスなんだろうなぁ。そういう所がロックなのだって思う。

 資本主義も社会主義もどちらも結局はトップに王様が君臨することが多い中で、ロックの民主制って実に面白い。

 音楽の才能はものすごくあるけれど人付き合いが苦手な人、ビックマウスだけど実は小心者、一般社会では排除されがちな人なのに、バンドがちゃんと成立するのは、それぞれの才能を認めているから。それは、子ども時代から、売れなかった時代から、ずっと苦楽を共にしてきたという共同体意識があるからこそなのだろう。

 今やロックは昔の音楽って思っている人も多いみたいだけど、まだまだロックは死なない。音楽のスタイルは変わっても、誰かと一緒に楽しい気持ちを共有することの魅力を知る人がいる限り、バンドは生まれ続けるんだろうなぁ。それができなくなったら、人類は終わりだと思う。

2889冊目(今年227冊目)

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