『絵とき百貨店「文化誌」』 宮野力哉 224
ハロッズはなんの抵抗もなく、受け入れられる条件が整っていた。なによりもイギリス王室御用達の百貨店を見習うことが、より高級感のある店づくりができると日比は考えたのだろう。そして、むすこに雷音と名付けるほどのライオンマニア。トラファルガー広場のライオン像を、将来の店のシンボルにと複製の制作を依頼。完成したライオンは、これまたイギリスで新造された軍艦春日で日本へ輸送されることになる。洋服部を開設し、ロンドンからアレキサンダー・ミッチェルを指導者として招聘。店内ではイギリス製の掃除機が活躍した。
大正3(1914)年10月、鉄筋コンクリート5階建ての本店が完成。ライオン像が据えられ。ハロッズの社長から祝電が届いた。P45
三越の前に必ず置かれているライオン像はこういう経緯で作られたとはねぇ。ライオンマニアの担当者でなかったら、違うシンボルになっていたのかしら?
歴史的大発明「御子様洋食」昭和5(1930)年
三越本店に登場した「お子様ランチ」は子ども連れの顧客に大人気。百貨店は買い物をするだけでなく、おいしいものを食べる場所としても認知されるようになったのです。
新しい包装紙は26(1951)年7月1日、中元期から使用された。包まれる品物の大小にかかわらず、どの角度から見ても図柄が美しい、新鮮なデザインである。
白地に赤の抽象画デザインは猪熊弦一郎画伯。Mitsukoshiの文字は「そっちで書いてね」と言われて、当時三越本店宣伝部で勤務していた「やなせたかし氏」が書いたそうです。
百貨店は物を売るだけでなく、美術展を開催したり、お芝居や音楽会開催したりするようになりました。さらに音楽隊や歌劇団を結成したりもしました。そのなかで最も成功したのが「宝塚歌劇団」です。
百貨店は、外から建物を見るところからステキでなくてはいけないという考え方で作られています。ある意味、金にいとめはつけないという発想で作られているので、現代では作り得ないゴージャスな建築デザインに圧倒されてしまいます。
様々な内外の建築家が百貨店を設計していますが、その中に大丸百貨店を設計したヴォーリズさんの話も登場しました。「屋根をかける人」にそういった話が出ていたことを思い出しました。
池袋西武が貸しビル業になって、テナントにどこが入るのかが話題になっていますけど、かつてのような百貨店万能主義な考え方はもう無理なのかもしれません。百貨店に変わるのは何なのでしょうか?今や池袋もアニメの殿堂なのだから、そちら方面へ向かってもいいのかも?
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