『さいはての彼女』 原田マハ 229
この短編集の主人公はみんな、頑張って生きることが当たり前だと思って、恋もゆとりもかなぐり捨てて生きてきた女性たち。これまで「わたしが頑張らないと」という思ってきたのに、旅の空の下で、実はそれがただの独りよがりだったと気づいてしまうのです。
「わたしの人生はこんなはずじゃなかった」と思っても、これまでのやり方を捨ててしまおうと思っても、これからどうしたらいいのかわからないし、誰かに相談したくてもそんな相手もいないし。この歳じゃ再就職もできないし。
旅先で見た景色、こちらの都合など関係ない天気、出会った人との会話。普段と違う世界に来てみたら、これまでのあくせくした生活って何だったんだろうって思えてくるのです。毎日何かに追いかけれられるように感じていたのは、何だったんだろうって思ったら、肩にのしかかっていた荷物がなくなったような気がしたのです。
この4編が収められています。
・さいはての彼女
・旅をあきらめた友と、その母への手紙
・冬空のクレーン
・風を止めないで
「さいはての彼女」で、ナギが父親に「耳の聞こえる人と、自分との間に、見えない『線』がある。」と言った時に、父親が言ってくれた「ナギ、そんな『線」 はどこにもない。もしあるとしたら、それは耳が聞こえる人たちが引いた『線』じゃない。お前が勝手に引いた『線』なんだ。いいか、ナギ、そんなもん、超えていけ。どんどん、超えていくんだ。」という言葉が、すばらしいなぁ。
わたしにできるのはここまでという線は、自分自身で決めちゃったものなんだということに気づけたら、きっと超えられるんだよという思いが、わたしの胸にも届きました。
2891冊目(今年229冊目)
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