『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』 シャルル・ペパン 270
そもそもフランスの高校では哲学が必修、バカロレアと呼ばれる大学入学資格試験では文系理系を問わず哲学の筆記試験が課されます。これは欧米の特にエリートにとって、哲学は不可欠な教養であるとの歴史的に根付いた考えがあってのことです。本書はフランスの老舗出版社フラマリオンが刊行している学生向けコレクションの一冊で、本国ではベストセラーになりました。(書籍紹介 より)
この本で紹介されている哲学者は、プラトン、アリストテレス、デカルト、スピノザ、カント、ヘーゲル、キルケゴール、ニーチェ、フロイト、サルトルの10人です。これが高校生向け参考書とは、凄いと思います。
哲学をよくわからない人でもとりあえず名前だけは聞いたことがある人が並んでいる中で、フロイトの名に「アレ?」って思いませんでしたか?フロイトと言えば精神分析だと思っていたわたしにとって、彼の言葉は衝撃でした。
「肉体は運命である」
フロイトがここで「肉体」と言ったのは、客観的な肉体、身体全体ではなく、皮膚に残った傷跡や大きすぎる鼻、発音不全など、その人の人生に影を落としかねない身体的特徴や欠陥など、肉体構造の一部、身体の一部分でしかないのである。
それでも、こうした身体的特徴が自分の目から見て気になってならず、やがて、他人の視線を感じることにもなり、ついには感情、セックス、職業などの様々な面で人生に作用し、ある種の運命を背負わせてしまうことがある。P145
その運命に押しつぶされるのか、運命とうまく折り合いをつけるのか、それが人生です。自分で自覚できることを考えるのが哲学であるのなら、自分で自覚できないでいた何かを探り出し、それについて考えるのも哲学なのではないでしょうか。
日本人が考えている勉強というのは、どうも理屈や過去の事象を覚えることに終始しているように思えてしょうがないのです。本当に大事なのは自分の頭で考えること、想像することであるはずです。「大学で勉強をしたいなら、哲学を学ぶことが必要である」というフランス人の考え方は理にかなっています。
議論するには哲学が必須であるという思想を日本が取り入れてこなかったのは、為政者にとって便利だからという理由だとしたら、それは恐ろしいことだと思うのです。
2932冊目(今年270冊目)
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