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『希望病棟』 垣谷美雨 257

希望病棟

垣谷美雨(かきや みう)

小学館文庫

 神田川病院の「黒田摩周湖」医師は、2人の末期がん患者の担当になりました。摩周湖さんは、問題ありの医師だと周りから思われています。それは、彼女が「空気が読めない」人だから、ついつい患者さんの前で言ってはいけないことを言ってしまったり、質問されてもきちんと受け答えできなかったりしているからなのです。

 そんな彼女が、後悔病棟で登場したあの聴診器を使ってみたら、あらビックリ!患者さんの心の声が聞こえてきたのです。

 患者のひとり、桜子さんは児童養護施設で育ち、周りの大人を全く信じていません。とりあえず大人の言動に合わせて今まで生きてきました。もうひとりの患者さんの貴子さんは、今は代議士の妻の座に収まっていますけど、元は水商売をしていて、その過去を隠しています。おまけに代議士である夫も、姑も、選挙のことしか考えていない人たちで、お見舞いにも来てくれません。

 この2人の心の声を聞いてしまった摩周湖さんは、いろいろと思い悩みます。そして子どもの頃からちっとも構ってもらえなかった自分自身の子ども時代のこともいろいろと思出し、彼女たちを比較してしまうのです。

 

 みんな心の中に多かれ少なかれ黒いものを抱えています。それは真実であることもあるし、自分で勝手に作り上げてしまったものもあります。いい人だと思っていたら実はひどい人だったり、嫌な人だと思っていたら、それには訳があったり。でも、そういうことって見えないものだから、真実を知るのは難しいんですよね。

 自分の境遇を運が悪かったとか、頭が悪いからなんて理由付けをして諦めてしまう人が多い中、2人の患者さんも摩周湖さんも、ちょっと見方が変わったら、「もしかして、変えられるかも」って思えたのが良かったなぁ。

 「そんなに上手く行くはずない」っていうのは簡単だけど、そうやって、頭から諦めちゃダメだよねという気持ちになれました。

2919冊目(今年257冊目)

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