『大相撲と鉄道』 木村銀治郎 254
普段わたしたちが目にする大相撲は本場所だけですけど、力士たちは年三回の地方本場所(名古屋・大阪・福岡)と地方巡業で日本国中を旅しています。彼らの移動手段(列車・飛行機・バスなど)を手配しているのは行司さんなのだそうです。この本の著者である木村銀治郎さんは大の鉄道ファンなので、このお仕事を大変であるけれど楽しみながら行っているようです。そんな彼に執筆を依頼したのは能町みね子さんです。この本の中ではイラストを担当しています。
200名以上の切符の手配も大変ですけど、それよりもさらに大変なのが席割りなのだそうです。部屋単位でまとめなければならないし、そもそも身体が大きな力士たちですが、その中でも大きい人が並ばないようにという気配りも大事です。
昔の列車移動では、今では想像もつかないようなとんでもないことが発生していたそうです。車内でマージャンをする人、酒盛りをする人などがいたそうです。通路側の席は先輩力士たちが占領してしまうので、若手の力士はそこを通過できず、網棚の上を通路代わりにしていたこともあるそうです。
琴欧州(鳴門親方)が若かったころ、ケガをして松葉杖をつかないと歩けない状態だったのを見て、足を延ばせるように2人席の通路側の席を割振ったのに、銀治郎さんが見に行ったら3人席の中央に座っていました。後日、何故その席になったのかを聞いたら、先輩力士に交代しろと言われたので、仕方なくその席になってしまったというのです。それがものすごく悔しくて、番付さえ上がればこんなことをされなくなるのだと心に誓い、稽古に励んだ琴欧州は数年後大関となり、現在は鳴門部屋の親方として頑張っています。
巡業の代表者は巡業部長です。この役職は若手の親方が担うことが多いのですが、千代の富士が引退後に巡業部長になったときには、それはそれは怖かったそうです。う~ん、わかるなぁ(笑)
そもそも鉄ちゃんである銀治郎さんは、忙しい行事のお仕事の合間に列車や駅を見に行ったりしています。そのバイタリティには恐れ入ってしまいます。
国技館から一番近い図書館(墨田区緑図書館)では、本場所が近くなると必ず相撲特集のコーナーができるので楽しみにしています。その中からこの本を見つけました。
最後の方で語られていた国技館が両国へ建設された秘話や、相撲列車の話など、相撲好きならぜひ読んで欲しい本です。
2916冊目(今年254冊目)
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