『博物館の少女 騒がしい幽霊』 富安陽子 258
明治16年秋のこと、軍卿、大山巌邸で続いている怪異現象を調査して欲しいという依頼が、怪異研究所へ舞い込んだのです。所長のトノサマは、内部調査のため、この家の子どもたちの教育係としてイカルを送り込むことを思い付きました。現在の大山氏の妻は後妻である山川捨松、2人の子どもは無くなった先妻の子でした。イカルは年末の5日間だけお屋敷へ通うことになったのです。
お屋敷に長く勤めている清さんは、歳のせいでしょうかちょっとボケてきたようで、おかしなことをしたり、言ったりすることがあるのですが、子どもたちが懐いているので多少のことは気にせずにいてほしいと捨松さんから言われたイカルは、なるべく気にしないようにしていたのですが、やっぱり変です。
死んだはずの人を屋敷の中で見たとか、天井裏でドンドンという音がするとか、話には聞いていましたが、イカルも同じようなことを体験してしまいます。おまけに死人が出たり、泥棒が入ったり、このお屋敷はいったいどうなってるのでしょう?
イカルが大阪からこちらへやって来てまだ半年ほどですが、トヨさんと仲良くなり、上野の博物館の所長であるトノサマにも気に入られています。トヨさんのお父さんである絵師の河鍋暁斎さんも気に入ってくださったようで、暁斎さんの展覧会に招待していただいたり、イカルは少しずつ東京の生活にも慣れてきました。
ジョサイア・コンドルさんが暁斎さんの弟子だというお話や、ヘンリー・フォールズ医師と貝塚で有名なエドワード・モース博士が「指紋」を発見したというお話など、明治時代に日本へやって来た人たちの話がどれも面白いのです。そして大山捨松さんは、津田梅子さんとともに幼くしてアメリカへ留学された方で、大学卒業後に看護婦の資格も取っています。
巌さんと初めて出会った時に、薩摩弁と会津弁でまったく会話が成り立たなかったので、フランス語で話をして初めて会話が弾んだという話がこの本の中にも出てきましたが、海外育ちの捨松さんの姿に、巌さんは一目惚れだったようです。
イカルはこれからも、様々な経験をして成長敷くのでしょうね。トノサマの使用人であるアキラのことが気になってしょうがないイカルですけど、アキラの方も同じような気持ちでいるような感じがします。この物語はまだまだ続きそうなので、その辺もたのしみだなぁ。
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