『エミリの小さな包丁』 森沢明夫 263
エミリは何もかも無くして、どこかへ身を寄せたかったのです。でも両親は離婚してしまっているし、さほど仲の良い友達もいません。母方のおじいちゃんに電話をしたら「来てもいいよ」って言われました。小さな時以来会ったことがないおじいちゃんだから、どんな人だかわからないけど、そこへしか行くところがないから、ドキドキしながら海辺のおじいちゃんの家へ行ったのです。
おじいちゃんは80歳くらいでひとり暮らしをしていました。エミリは最初はどういう風に話をしたらいいのかもわからなかったけれど、寡黙なおじいちゃんは余計なことを聞いてこないとに好感を持てました。空いている部屋を借りて、ここでしばらく暮らすことになりました。
おじいちゃんは釣りが上手くて、初めて釣りをするエミリにも魚が釣れました。ふたりで犬を連れて散歩をしていると近所のおばちゃんが野菜をくれたりします。魚をくれる人もいます。浜辺でいつも釣りをしているけれど、ちっとも魚が釣れないおじさんもいます。
エミリはおじいさんに料理を習うようになり、毎日包丁を研ぐのが日課になりました。近所の人たちとも少しずつ知り合いになり、少しずつ笑えるようになってきました。
テレビもエアコンもなく、ほぼ自給自足の毎日で、エミリは「これまで自分が信じてきた常識って何なんだろう?」って思うようになりました。いつも時間に追われて、ごはんを味わって食べることすら忘れていたんだということに気づけてヨカッタ。
どうしてエミリが都会から逃げ出したのか?を元の職場の同僚がバラしてしまったことで、エミリはとても焦ります。今まで必死に隠してきたのに、どうしようってね。でも、それで良かったんじゃないかしら。ずっと隠し通す方が辛かったわよ、きっと。
エミリはひとりじゃなかったのよ。みんながエミリのことを心配してくれてたのに、それに気づけなかっただけ。
おじいちゃんとふたりで台所にいるところを写真に撮ってもらったシーンがあって、それがこの本の表紙になってます。とっても暖かい感じが伝わってくるいい絵ですねぇ。この表紙を見る度に、ふたりのことを思い出せそうです。
2925冊目(今年263冊目)
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