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『近代おんな列伝』 石井妙子 261

近代おんな列伝

石井妙子(いしい たえこ)

文藝春秋

 歴史の教科書に登場するのは男性ばかりなのは何故か?って考えたことがありますか?大河ドラマの主人公だってほとんどが男性ばかり。現代においても政治家だって、企業の社長だって男ばかり。人口の半分は女なのにどうしてそうなってしまうのでしょうか?

 この本で紹介されている女性たちは実に有能な人達ばかりです。酒浸りで働かない夫に代わって家を守ってきた人もいれば、国策で海外へ嫁いだ人もいます。様々な運命を背負って生きてきた女たちが大勢いるのです。

 

女性蔑視の感性を改めなければ日本はいつまでも野蛮国のままだ(岸田俊子)

自分の頭脳を物をおぼえる機械のようにして教師の前に提出したり、両親の意志を実行する機械のような子供のあることは、長い間の詰め込み教育 ー それを盛んに攻撃しながら、やっぱりそこから抜けきらずにいる今の教育の害毒(羽仁もと子)

日本の男たちは一夫一婦制など守ろうともしないし、公娼制度も存在する。それなのに、女には貞操を求めている、と、その矛盾を非難した。(菅野須賀子)

 100年以上前のこれらの言葉が、今の日本でもそのまま通用してしまうのは、余りにも悲しいです。

 

「教壇に立たせて欲しい」と何度も文部省にかけ合ったが、埒が明かなかった。捨松らの留学中に国の方針が大きく変わり、彼女たちを迎えて女学校を新設するという話は立ち消えになっていたのだ。

留学経験のある男性でさえ自我を持たない十代の少女を結婚相手に選ぶ。捨松はこう嘆いている。
「日本の男性が立派になれないのは、そこに原因があると思います」

 津田梅子らと日本初の女子留学生としてアメリカで勉強してきたのに、日本に帰って来ても働く場所がなかったのです。おまけに22歳ではすでに行き遅れだとまで言われました。大山巌に見初められた時にも、最初は断りたかったようですが、話をしてみると面白い人だったので結婚を決めたようです。この時も「調子よく玉の輿に乗って」と言われたのですが、日本では結婚していない女は何もできないのだと割り切って、捨松はそういう言葉には耳を貸さないようにしたのです。

 

 「天皇家に仕えた女たち」に登場する女たちは、側室も正室も立派な人ばかりです。逆に言えば、そこまでしなければ天皇家の血はつながらなかったわけで、今の体制ではもう存続は無理かなと思えてきます。

 

第1章 政治を支えた女たち
高須久子 吉田松陰が思いを寄せた女囚 
勝民子 勝海舟を拒否した正妻 
大浦お慶 維新に裏切られた女 
高場乱 アジア主義を生んだ女志士 
マサとうの 高杉晋作「妻妾」の光と影 
木戸松子 英傑との愛を貫いた芸妓 
伊藤梅子 伊藤博文と女太閤

第2章 運命を切り拓いた女たち
富貴楼のお倉 料亭政治を作った女 
山本コマツ 海軍の栄光と生きた女将 
吉田貞子 山縣有朋と二人の貞子 
安藤照 桂園時代を支えた二人のお鯉 
原浅 原敬が求めた岩手の女 
上原栄子 沖縄の遊廓を守ろうとした女 

第3章 天皇家に仕えた女たち
一条美子 創られた「皇后」像 
柳原愛子 皇位をつないだ側室 
九条節子 昭和天皇を産んだ正室 
李方子 朝鮮王室に嫁いだ皇女 
愛新覚羅浩 満洲国へ渡った侯爵令嬢 

第4章 社会に物申した女たち
岸田俊子 男女同権を唱えた元女官 
出口なお 明治という時代が生んだ女教祖 
管野須賀子 幸徳秋水の片腕となったジャーナリスト 
金子文子 自我に目覚めた「革命家」 
羽仁もと子 新しい家庭人を目指した教育者 

第5章 才能を発露した女たち
楠本イネ 近代医療制度に押し潰された名医 
横井玉子 女性芸術の礎を築いた教育者 
若松賤子 児童教育の先駆けとなった会津の孤児 
相馬黒光 革命と芸術に惑溺した女主人 
長谷川時雨 忘れられた女性作家 
高岡智照 自我を貫き尼となった美妓 

第6章 世界に飛躍した女たち
大山捨松 津田梅子の黒子となった帰国子女 
石井筆子 近代のいばら路をつき進んだ障碍者教育の母 
川上貞奴 女性の自立を体現した元祖国際女優 
クーデンホーフ光子 「EUの父」を産んだ町娘 
河原操子 アジアのかけ橋を目指した女教師 
川島芳子 日中の対立に翻弄された清朝の王女 
人見絹枝 祖国に潰されたアスリート 

 

ジェンダーギャップで日本は146カ国中125位で過去最低 国際機関「世界経済フォーラム」が毎年発表している、世界各国の男女格差についての調査結果が、2023年6月20日報道された。この調査結果から感じるのは、日本はいまだに男尊女卑の社会であり、男性中心で政治、経済、社会を動かしているということ。(担当編集者のことば)

 この情けない数字を見てもわかる通り、日本は後進国なのです。

 お金をたくさん稼ぐことで先進国になろうとした日本は、もっと大事なことを忘れていたのです。人間がみな平和で平等に暮らすことができる国になることを目指せないのは、既得権を守ろうとする人たちが政治や経済を牛耳っているからなのです。

 

 あとがきで、この本の表紙の絵(女人像 甲斐荘楠音 作)について語られていたのがとても嬉しかったです。楠音もまた、マイノリティとして大変な人生を歩んできた人ですから。

2923冊目(今年261冊目)

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