『地方消滅』 増田寛也 297
人口数を維持するのに必要な出生率を「人口置換水準」というが、2012年現在の日本の場合、これが2.07といわれている。(2013年の)1.43という数字は、将来、日本の人口が現在の約七割に減少することを意味している。P3
近年の人口動向を見ると、若年女性が都市部に集中し、その結果、都市部では女性が男性に比べて多く、逆に地方は男性が多くなっており、それぞれ男女比のバランスが取れていない。P76
藻谷 私は講演で、行政には「納税者が減るんですよ」と言い、企業には「顧客がいなくなりますよ」、政治家には「有権者が老人ばかりになっていいのですか」と話すんです。すべてすでに起こり始めていることなのに、事態の深刻さがほとんど分かっていない。
例えば東京圏の生産年齢人口(15~64歳)は2000年から減少しています。なのに、「もう10年以上も前から、東京の現役世代は減っています」という話をすると、みんな仰天する。ただ、私が行った企業の中で、JR東日本とトヨタの方は「異変」に気づいていました。鉄道会社は定期券の売上で知る。トヨタは自前の販売網を持っていますから。
増田 逆に言えば、大半の企業はそうした調査さえやっていないということですね。P142
藻谷 ちなみに、米国企業のトップ100のうち、ニューヨークに本社を置くのは四分の一。日本では七割が東京です。
増田 みんな丸の内にいるというのは、世界から見れば異様な光景ですよ。P154
会社も、大学も、とにかく東京に一極集中してしまっているからこそ、ゆがんだ社会が生まれてしまったのは間違いありません。それを助長したのは、地方を代表しているはずなのに、実際には東京で暮らしている代議士たちと、東京に本社をおく大企業なのでしょうね。何でもかんでも東京の視点でものを決めてしまう。
地方の駅前やショッピングモールへ行くと愕然としますよね。どこへ行っても同じチェーン店ばかりが並んでいて、その町、その地方の店はどこにある?と思うことがホントに多くて嫌になってしまいます。
今でさえ、若者たちを低賃金で「使い捨て」にしているのが、東京という都市でしょう。そこに更に職にあぶれた地方の人たちが、大挙して流入して来たら、どうなるか。そんなところに若者を集めれば、少子化にますます拍車がかかるのは必定。家賃の高さ、地域のサポートの希薄さ・・・。東京などの大都市は、地方に比べて格段に子育てが難しいのですから。P146
こんな状況を放りっぱなしで「結婚して子供を産め」って言ったって、そりゃ無理ですよ。そんな余裕なんかないですもの。今日をどう生き延びるか、とりあえずホームレスにはならないようにしたい、というレベルの生活をしている人だらけなんですから。
図書館で、このタイトルを見て思わず手に取り、出版された年を見たら2014年。そんな前から様々な人が警鐘を鳴らしてきたのに、ほとんど役立たずな「少子高齢化対策」って、これからどうなっていくのでしょう?
最近実感しているのは、時代は変わったということです。もうイケイケドンドンの時代じゃないんだから、高層ビルとか新幹線とか、公共事業とか、万博とか、もうやめましょうよ。そのお金を振り向けるのは箱物じゃなく人間にして欲しいと切に願うのです。
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