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『おさがしの本は』 門井慶喜 291

おさがしの本は

門井慶喜(かどい よしのぶ)

光文社文庫

 和久山さんは、図書館レファレンスカウンター担当者です。真面目というか、どちらかといえば融通の利かない20代後半の青年です。レファレンス、つまり疑問や相談を解決するため、参考となる資料を案内するサービスをしている彼の元には、様々な質問が寄せられます。でも、その質問してくる内容が、勘違いだったり、「こんな表紙の本だったんだけど」という曖昧なものだったり、かなり推理力が必要なお仕事でもあるようなのです。

 おまけに、市の財政難で図書館が廃止されるのではないか?という話が持ち上がって、和久山さんはそちらの対応にも追われることになってしまうのです。

 

 この廃止論の中で語られる「図書館は貸本屋ではない」とか「図書館は不要不急の仕事だから予算を削っていい」とか「運営は外部委託」とか、そういう話って、もっともらしく語られるけど、結局はお金のことしか考えていない人が多いんだなと思います。

 図書館の使命とは「すべての国民は,いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する」というのが根幹にあるはずなのですけど、そんなこと知ったこっちゃない人達が多いのが悲しいです。

 日本の役所は基本として「申請主義」つまり、誰かから申請されたことに対して仕事をするというスタンスなので、それ以外のことは予算でしかものを考えられなくなっているのでしょうね。

 

 この5篇が収められています。

・図書館ではお静かに
・赤い富士
・図書館滅ぶべし
・ハヤカワの本
・最後の仕事

 「図書館滅ぶべし」で、上司からの質問に答えるべく調べた「外来語」のポルトガル語とオランダ語の一覧表がとても興味深かったです。「カルタ、ボタン、カボチャ」(ポルトガル語)や「ゴム、コンパス、ランドセル」(オランダ語)などの言葉は、完全に日本語になってしまっています。こういうことを調べるには、やっぱり図書館ですよね。

2953冊目(今年291冊目)

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