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『愛という病』 中村うさぎ 282

愛という病

中村うさぎ(なかむら うさぎ)

新潮文庫

人生を狂わす名著50で紹介されていた本

 人生を狂わす名著50で紹介されていたこの本、うさぎさんが50歳くらいの時に連載していたものをまとめたもので、「閉経」という女の体にとって大きな転換期に書かれたものです。これまでうさぎさんの中で大きな部分を占めていた男との関わり方、考え方が思いっきり変わってしまったことに驚き、その胸の内を思いっきりさらけ出しています。

 

で、ふと思い当たったことがある。私には子どもがいないし、子供を産むつもりはなかったんだけど、たとえば完全に肉体改造を終えたニューハーフに対して、「とはいえ、あの子たちには生理もないし、子供も産めないじゃん。やっぱ、女の身体はしてても女とは言えないよ」などと思っていたのだ。たとえ生殖する気がなくても、生殖能力があるということは、わたしにとって「女の証」であったらしい。

~ 中略 ~

てえことは、閉経した私は「女」ではなく「ニューハーフ」に近い存在ってことなのか!?オッパイも偽物だしね、がぁーーーん!!!P109

 この本の中で、女性たちはなぜ美輪明宏とかマツコ・デラックスのような人たちの存在を「好ましいもの」と感じるのかという話が何度か登場するのだけど、うさぎさんがゲイやニューハーフの人達たちから好かれているのも、同じような理由なのかなって思えるのです。

 自分に正直に生きようとすると、世の中の「普通」から逸脱してしまう人たちを、他人ごとではなく自分ごととして感じているうさぎさん。美輪さんやマツコの吐く毒を「そうそう、そうなのよ」と共感する女性たち。そうか、わたしたちはみんなマイノリティなのよねっていう共感なのかなぁと思えてくるのです。

 

そういえば、アタシたちオカマと対峙するときに、オヤジがよく言う言葉がある。「俺はその木ねえから、やめてくれよ」などと必要以上にひいて見せるアレ。ほーんと、ブスね~。ブス女が「あたしの体が目当てなんでしょ!」っていうギャグでアンタたちも散々笑ってきただろうに、何で全く同じことをやってるイタさに気づかないのかしら。まさしく、うさぎさんも書いてる「自分棚上げ精神」。(ブルボンヌ 解説より )

 フフフ、こういう人いるわねぇ。「あなたは大丈夫だから心配ないから」彼らだって、誰でもいいってわけじゃないのよ。好みの人じゃなきゃ手を出すわけないの!

 そういうことすらわかっていないオヤジたちが日本を牛耳っているから、いつまでたってもLGBTQの問題は解決していかないんだよなぁ。この本が出版されてから10年以上経つけど、この問題に関してはさほど前に進んでいないもの。世界から取り残されていくのは当然よねぇ。

 

 うさぎさんの友人の整形外科の先生が、女性はオカマと結婚するするのが理想的と言うんです。

「オカマって「母」の役割を持ってるんだと僕は思うんだ。現代女性は成人しても潜在的に「母」を求めてるんだけど、現実の「母」は「女」だから、ちょっと女の生々しさみたいなものがあって、そこが引っ掛かる人は多いんだよね。でもオカマは、そんな「女の生々しさ」を持たない「母」として、機能するんだよ

 この頃のうさぎさんはお元気だったんですけど、その後、難病で車椅子生活となってしまいました。その時にゲイの夫が献身的に尽くしてくれて、現在は杖をついて歩けるくらいに回復されたそうです。つまり、先生の言葉は大正解だったのです。

 夫の存在があって初めて生きていけていると語る現在のうさぎさんが、今再び「愛」について語るとしたら、どんなことを語るのかなぁ?

2944冊目(今年282冊目)

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