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『桃を煮るひと』 くどうれいん 298

桃を煮るひと

くどうれいん

ミシマ社

 れいんさんは食いしん坊、でも世間が言うようなグルメってわけじゃない。じゃがいもと玉ねぎのおみそ汁とか、とろろ汁とか、もずく酢とか、どちらかと言えば昔から当たり前にあるものが好き。そして彼女が食べたいなぁって思う物のど真ん中にあるのは、お祖母ちゃんが作ってくれた「たくあん」とか「くるみ餅」。いいなぁ、こういう基本を持っている人なら、絶対にちゃんとした人だよ、間違いないって思っちゃう。

 外食にひとりで行けないとか、実は安納芋があんまり好きじゃないとか、弱点をさらけ出してくるのも好感が持てる。世間でどんなに流行ろうが、そんなことはどうでもいい。自分が好きなもの、好きじゃないものがはっきりしているのっていいことだと思う。

 だから、ちょっと高級そうな和菓子屋さんで干菓子を一生懸命に見ていたのに、「どらやきはいかがですか?」ってお店の人に言われて、傷ついてしまった気持ちはよくわかる。一生懸命に見て悩んでいる人に、そういうことを言う人がいるお店にはもう行かないのは当然だよね。

 「んめとごだけ、け」(おいしいとこだけ食べなさい)という、お祖母ちゃんの言葉の真意を汲み取った、れいんさん。将来、きっとすてきなお祖母ちゃんになるんだろうなぁ。

2960冊目(今年298冊目)

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