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『昭和史の10大事件』 宮部みゆき、半藤一利 295

昭和史の10大事件

宮部みゆき(みやべ みゆき)

半藤一利(はんどう かずとし)

文春文庫

・昭和金融恐慌
・二・二六事件
・大政翼賛会と三国同盟
・東京裁判と戦後改革
・憲法第九条
・日本初のヌードショー
・金閣寺焼失とヘルシンキ・オリンピック挑戦
・第五福竜丸事件と「ゴジラ」
・高度経済成長と事件 公害問題・安保騒動・新幹線開業
・東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件)

 お二人が選んだ昭和の10大事件ですが、半藤さんの解説を読みながら感じたのは、国を強くしよう、外国に負けないようにしようという意気込みだけで突き進んでいった日本だったのだなぁという、残念な気持ちばかりなのです。こういうところは、今も全く変わっていないのが恐ろしい気がします。

(半藤)イギリスはそこで、「アジアは日本の海軍に任せる」というのっぴきならない事情で、日英同盟を結ぶんですよね。つまり簡単に言うと、日露戦争は独仏対イギリスの代理戦争だ、という見方をする人もいるわけです。自分たちは直接には戦争したくないけど、アジアの方でやらせれば、それでロシアの力を弱めておくことができると考えた国があった。
(宮部)それが大事なことだったんですね。
(半藤)日本はロシアに勝ったと浮かれていましたが、実態は違うし、イギリスにとってはそれはあまり重要ではない。相打ちでロシアの軍事力が損なわれればよい。(二・二六事件)

 

(半藤)満州国を昭和7年(1932)に作っていろいろどんどんやって、日本の国力は金融恐慌勃発4年後の昭和6年がGDP(国内総生産)のどん底だったんですけど、その昭和6年から、満州事変、第一次上海事変、満州国建設などがあって少しずつ景気が良くなり出して、昭和12年が、たしか戦前の最高の時期なんです。
(宮部)え? 12年ですか。
(半藤)そうです、驚くなかれ、経済成長率が7年から11年まで平均7パーセント、12年は23.7パーセント。ウォール街発の世界大恐慌から世界で最初に脱却したのが日本なんです。(大政翼賛会と三国同盟)

 そして、豊かになった日本が目指したのがナチス・ドイツのような統制国家、つまり独裁政治だったのです。
 当時子どもも歌っていた「とんとん とんからりと隣組」という歌がありました。隣組は大政翼賛会の末端組織なのです。隣組で監視し合い、言論の自由などない世界へ突き進んでいったのです。

 

(半藤)1989年にね、ベルリンの壁、天安門広場、ソ連もね(アフガニスタンから撤退)。世界がガラガラ変わっていくのがようくわかるんですね。日本も変わるんだけど、その象徴的な事件が宮崎勤。(東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件))

 昭和が終わり平成になったのもこの時、ここから失われた30年が始まったのです。世界が変わるときというのは、なぜこうやって足並みが揃ってしまうのでしょうか?それが時代の流れというものなのでしょうか?

 宮部さんが二・二六事件を舞台にして書いた作品「蒲生邸事件」を読んでみようと思います。

2957冊目(今年295冊目)

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