『読むとなんだかラクになる がんばらなかった逆偉人伝 日本史編』 加来耕三・ミューズワーク(ねこまき) 304
一般的な偉人伝だと、いかにその人が頑張ったのかが大事ですよね。でも、この本で取り上げているのは、まったく逆の生き方をした人達です。本当は将軍なのに、その仕事を誰かに任せてしまったり、仕事の内容にケチをつけられても気にしなかったり、自由に生きた人たちの記録です。
本当は自分がやらなければならない仕事を誰かに泣きついてやってもらったり、部下に投げっぱなしだったりするのって、気の小さい人にはとてもできないことです。ということは、この人たちはかなり神経が太い人、あるいは、そんなこと気にもしない人、つまり大物だったのでしょうね。
自分がイヤイヤやったって上手く行かないんだから、それを得意な人にやってもらえばいいでしょというスタンスは、ある意味正解だと思うんです。それよりも、自分が好きなこと、得意なことを極めたいという考え方は、取りようによっては我儘ですけど、そちらに才能があるなら、それでいいんじゃないかと考えた人が周りにいたからこそ、彼らの人生は上手く行ったのです。
逃げる(桂小五郎)、泣きつく(足利尊氏)、人まかせ(徳川家綱)、スルーする(和泉式部)、世間を気にしない(前田慶次)、投げ出す(上杉謙信)、がまんしない(坂本龍馬)、こだわらない(徳川家康)、嫌われ上等(石田三成)、日常生活を放棄(葛飾北斎)、趣味に生きる(徳川慶喜)、本業やる気なし(足利義政)…など、いろいろなパターンの「がんばらなさ」を発揮した25人を収録。
そういう自由な人達の話の合間に、真面目過ぎて失敗してしまった人たちのエピソードがコラムとして載っています。たとえば、好きな人に会いたい一心で町に火を放ってしまった八百屋お七。恋は盲目というけれど、そこまでしちゃダメでしょというブレーキが利かなかった、彼女の真面目さが生んだ悲劇です。
がんばらないみなさんのお話を更にパワーアップしているのが、ねこまきさんが描く動物キャラ化した各人物です。彼らの姿を見ていると、これでいいんじゃないって思えてくるから不思議です。
がんばりすぎて身体や心を病む人が増えています。いちど倒れてしまったら、立ち上がることはなかなかできません。もしかしたら死んでしまうかもしれません。だからこそ、がんばらなかった人達を知ることって大事だなと思うのです。そんなにがんばらなくても、なんとかなるよって思えたら、それだけで上出来だと思うのです。
#逆偉人伝 #NetGalleyJP
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