『これからの時代を生き抜くためのジェンダー & セクシュアリティ論入門』 三橋順子 334
本書は、2012年の開始以来、毎年300人以上の学生が受講する明治大学文学部の『ジェンダー論』の講義録を基に執筆されたジェンダー&セクシュアリティ論の入門書です。
「ジェンダー」という言葉を様々なところで聞くようになりました。でも「その意味を正しく認識している人は少ない」というのが現実です。
ジェンダーとは「人間が生まれたあと後天的に身につけていく性の有り様」と言い換えることができます。ここで大事なことは「後天的に」の部分です。したがって、ジェンダーとは「身体的(先天的性)であるセックス(Sex)とは基本的に別次元のもの」となります。つまり、ジェンダーとセックスは一致する場合が多数ではあるけれど、一致しない場合もあるということです。P28
わたしたちは子どもの頃から「男らしく」「女らしく」と言われ続けます。「男の子だから泣いちゃいけない」とか「女の子だからピンクのリボンね」とか言われて育ってきました。本当は男の子だって泣いていいんだし、女の子でリボンが嫌な子だっているのに。男と女という二種類にはっきりと色分けしようという発想が、どれだけ多くの人を苦しめてきたことか。
男女のカップル、レズビアンのカップルはプリクラを撮れる。でも、ゲイのカップルはプリクラを撮れないという話を聞いたときでした。おそらく、この掲示「男性のみのお客様はご遠慮ください」が設けられたとき、プリクラを撮りたがるゲイカップルがいるという想定はしていないでしょう。つまり、この掲示は男性差別であると同時にゲイ差別でもあるのです。P34
プリクラを撮っている女性に危害を与える男性がいるという想定で「男性のみはダメ」という規則があるなんて、わたしは知りませんでした。そのせいでゲイカップルはプリクラが撮れないなんてヒド~イ!
1人でプリクラ撮りたい男子だっているはずなんだから、「お店の人に声かけてね」くらいの規制で充分だと思うんだけどなぁ。
近代医学ではインターセックス児に対して、本人の意志とは関わりなく、便宜的な基準で医師や両親の判断に基づき、男女どちらかのせいに帰属させ、養育上の性別に適合しない内性器の除去手術や適合性を高めるための外性器の形成手術、性ホルモン投与が行われてきました。P128
男女どちらかはっきりしない、あるいは両方の要素を持って生まれてくる子が一定数います。でも、日本の法律では出生届を出すときに男女どちらかに〇を付けなければならないのです。
わたしは、これに該当する人を知っています。生まれた時は「男の子」だったのですが、いつの間にかその子は「女の子」になっていました。
疾病概念である「性同一障害」で自己規定する人は「自分は病気である、精神疾患である。だから医療によって救済されるべき存在なのだ」といった自己肯定になります。非疾病概念である「トランスジェンダー」で自己規定する人は「自分は病気ではなく、自分で性別を選択・決定した。だからこれでいいのだ」といった自己肯定になります。どの言葉(概念)を使うかによって、両者の意識の差はかなり大きいものになるのです。P183
「性同一障害」という認識は、世界的には時代遅れなのだということを、この本で初めて知りました。「障害」という言葉は「病気である」という意味なのだということも、初めて認識しました。
「性同一性障害」概念の消失によって、「性同一性障害者の性別の取扱いに関する法律」の改定は必至です。その際には、ぜひとも、諸外国に対して恥ずかしくない国際的な人権規範にそった法改正がなされることを望みます。P212
という、三橋さんたちの訴えを日本政府は無視し続けています。学術的に確立されている事実を無視してまで、なぜ動こうとしないのですか?その裏に誰かいるんですか?
「女装と日本人」がとても興味深い本だったので、この本に興味を持ち読みました。そして、今まで知らなかったことが余りにもたくさんあることに愕然としています。無知は罪ですね。
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