『あしたから出版社』 島田潤一郎 308
「まちの本屋」「電車のなかで本を読む」で、島田さんの本に対する愛を感じ、この本を読んでみようと思いました。
30歳を過ぎて就職しようと思って様々な会社を受けてみたけれど、どこもダメだったのです。いろいろ悩んだ末に、出版の仕事をしようと決断したのですけど、なにしろ何もかもが初めてで、どこから手を付けたらいいのかわからない所から始まったのです。
出版の仕事をしていた人なら無理だろうと思ってしまうようなことを、次々とやってしまう島田さん。最初に出版する本の装丁を和田誠さんに直接お願いして、何とOKを頂いたのです。それ以降も、既存の出版社ではできないようなことをやって来たのです。
大きな規模の会社だと本を大量に印刷して売らないといけないけれど、夏葉社の場合は、島田さんひとりだけなので、発行部数なども自由に決められることで、自由な企画ができました。その代わり、全国の書店さんを一軒一軒廻り、それぞれの店主さんの話を聞き、信頼を深めていくということに努めてきたのです。
島田さんの話を聞いていて、なるほどと思った。発行部数を決めるときも、あの書店なら何冊売れるはず、この書店なら何冊売ってくれるはずと、実際の書店を頭に置いて、そこから決めるから、売れ残らないというのだ。
これは衝撃だった。コペルニクス的転回だ。そういうふうに考えたことがなかった。たしかに、いい書店には、いい読者もついているはずで、言われてみればなるほどだ。(解説 残像のいい人 頭木弘樹 より)
固定観念がまったくない島田さんだから、これまで誰もやったことがない出版社を作り上げることができたのです。既存の社会システムに合わせることができない人だったからこそ、唯一無二のものを作れたのです。
今まだ誰もが無理だと思ってやってみていなかったことが、きっといろいろあるはずなのだから、チャンスはまだまだあるということですよね。
2970冊目(今年308冊目)
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