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『訂正する力』 東浩紀 326

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訂正する力

東浩紀(あずま ひろき)

朝日新書 926

NetGalleyJP

2024新書大賞 2位

日本には、まさにこの変化=訂正を嫌う文化があります。政治家は謝りません。官僚もまちがいを認めません。いちど決めた計画は変更しません。誤る(あやまる)と謝る(あやまる)はもともと同じ言葉です。今の日本人は、誤りを認めないので謝ることもしないわけです。P6

 どんなことを問いただされても「検討します」「善処します」しか言わない政治家。不祥事があって頭は下げるけど具体的な対策ができない経営者。あの人たちはそうやって時間が過ぎるのを待とうとしているだけなのだなと思うと、実に情けなくなってきます。間違ったら、どこが問題なのか考え、直していくということって当り前じゃないんですか!誤ると謝るは同じなんですよ!って叫びたくなることが多過ぎます。

 

これまで観光業でさんざん稼いできたフランスも、最近はオーバーツーリズムを懸念し、「地元コミュニティと環境保護のために観光客数を抑制する」という新たな方針を打ち出しています。華麗な方向転換です。
ただ、ここで大事なのは、その時に彼らが自分たちの行動や方針が一貫して見えるように一定の理屈を立てていることです。それはある意味ごまかしですが、そういった「ごまかしをすることで維持しつつ訂正していく」というのが、ヨーロッパ的な知性のありかたなのです。
ヨーロッパの強さは、この訂正する力の強さにあります。それは極めて保守的でありながら同時に改革的な力でもあります。ルールチェンジを頻繁にすることによって、たえず自分たちに有利な状況をつくり出す。それなのに伝統を守っているふりもする。それはヨーロッパのずるさであると同時に賢さであり、したたかさなのです。P21

 こういうところを「ずるい」の一言で胡麻化そうとする人がいるけど、そうじゃないんですよ。それらしく理由付けをすることで、みんなに納得してもらおうという配慮があるかどうかなんです。その言いわけを考えるのが知性なんですから。昨日と今日は違うんだから、変えていいでしょって説得できるかどうか、そこが日本人には足りないなぁ。

 

みんなYouTubeの話しかしない。ツイッターしか見ていない。親密な公共圏が壊れている。訂正する力を機能させるためには、もういちどそれを立て直す必要があるのです。P163

(カズオ・イシグロ氏は)リベラルなインテリは世界中を飛び回って国際的なふりをしているけど、じつはどこへ行っても似た階層のひととしか会わず、同じような話題しか話していない。もっと身近な人を深く知ったほうがいいと話しています。P165

 小学生に将来何になりたい?と聞くとユーチューバーになりたいという答えが多いということは、かなりの数の大人もそう思っているわけですよね。ネットの世界だと、自分が好きな世界に住む人とばかり付き合ってしまうから、それが世界のすべてだと勘違いしがちなのでしょうね。本当は、もっともっといろんな人がいるんです。

 家族とか、ご近所の人とか、いつも買い物をするスーパーの店員さんなどとのリアルなコミュニケーションがない人って危険です。そうやって自分の視界を狭くしてるから、自分がやっていることが変だということに気づけないんじゃないかな。

 

人は老います。人生は交換できません。それゆえ、ある時点からは訂正する力をうまく使わないと生きることがたいへん不自由になります。P181

 たとえば歳を取ると老眼になります。老眼鏡を掛ければいいだけなのに、なぜかそれを嫌がる人っていますよね。若い頃ほどたくさん食べられなくなるし、寝つきも悪くなるし、なのに頑なに自分は若いと言張り、嫌われる中高年ってなんだか悲しいです。そんな風に意固地になるということ自体が「老い」だって気づかないのかなぁ。

 そうか、歳を取るということはこういうことなのだなと素直に受け止め、自分が生きやすいように生活を変えていけばいいだけなのにねぇ。

 それは人も社会も同じこと。訂正しながら世界の流れに乗っていくって、そんなに難しいことなのでしょうか。

 

民主主義はすばらしい。けれども同時に怖いものでもある。なぜならば、民意は間違うし暴走するからです。この両義性を理解することが重要です。P210

 自由はすばらしいことです。でも、自由だからこそ間違えることもあります。それはしょうがないことです。絶対に間違えないなんてありえないんですから。だから、間違えたらすぐに訂正しようと行動を起こせることが大事なんです。

 今日は天気がいいと思って家を出たのに外は雨、そのまま出かけてしまいますか?家に傘を取りに帰りますか?そんなところから訂正するということを考えてみてもいいのではないかと思うのです。

#訂正する力 #NetGalleyJP

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