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『江戸へようこそ』 杉浦日向子 336

江戸へようこそ

杉浦日向子(すぎうら ひなこ)

ちくま文庫

粋と野暮の他に、キザがあります。一番嫌われていたのがキザであって、キザであるくらいなら野暮でいたいと言います。
野暮は、ちょっとした工夫で粋に転化することができますが、キザは永遠にキザのままです。そのキザの中に、半可通というのも入ります。生半可の半可です。
知ったかぶりをすること、本人が半可通である事実に気づいていないことが第一ポイントです。自覚のある半可通は皆無です。自覚のある野暮はたくさんいますから、その点が大いに違うところです。

 「江戸の粋」みたいな「うたい文句」を見かけた時に、ホントに分かってやってるのかなぁと感じることがよくあります。それを作った人は粋だと思ってるのかもしれないけれど、変に頑張ってしまっているところが見えてしまうと興ざめしてしまうのです。

 「粋」ってスタイリッシュだったり、カッコよかったりという部分だけでなく、ちょっとスキがあるところがいいのに。厭味ったらしいキザよりも「あたしゃ野暮ですから」って方がずっとカッコいいんだけど。

 

 江戸のことが大好きだから、もの凄く勉強したけど、大好きなところもあるけど、今の方が便利なことだってあるから、決してその時代に暮らしたいと思ってるわけじゃないという杉浦さんのスタンスが、キッパリしていてとても心地よいんです。

 杉浦さんは、江戸に対するノスタルジーではなく、「江戸の精神」を愛したからなんだという所がいいんだろうなぁ。

2998冊目(今年336冊目)

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