『恐怖の正体』 春日武彦 24-25
怖いもの、それは具体的に怖いもの、想像すると怖いもの、とにかく生理的に怖いものなどがあるのですが、人によってその怖さの度合いが違います。何かを怖がっている本人だって、その理由がわからないことがほとんどなのも事実です。
お化け屋敷が好きな人、バンジージャンプが好きな人、高いところが好きな人、ホラー映画が好きな人、こういう怖いものが好きな人というのは、それを嫌がる人の気持ちがわからないことが多くて、無理やり誘ってケンカの種になることもよくあります。
雷の音が怖いという人は結構いますけど、わたしにとってはただの大きな音でしかありません。雷が怖いものであるのはわかっているけれど、凄いなぁと稲光を見つめてしまうことがよくあります。怖いという気持ちと、興味があるという気持ちは紙一重であるような気がします。
蛇も虫も、昔は怖がる人が少なかったけど、都会化していくうちに接する機会が減って、怖いものになってしまったのかもしれません。
わたしが怖いなと思うのは真っ暗闇です。いつだったか蛍を見に行った時に、文字通り一寸先は闇の田舎道を歩いたときは怖かったなぁ。
そして、一番怖いのはやっぱり人間です。ネットで中傷を平気でする人、ヘイトクライムをする人、隙あらば他人のものでも公金でも自分のものにしようとする人、見つかったとたんに変な言い訳をする人、そういう人間が一番怖いなと思うのです。
第一章 恐怖の生々しさと定義について
第二章 恐怖症の人たち
第三章 恐怖の真っ最中
第四章 娯楽としての恐怖
第五章 グロテスクの宴
第六章 死と恐怖
「死が怖いと思う人」についての記述は、いろいろと考えさせられました。誰もがいつかは死ぬんだから、むやみに怖がってもしょうがないのにね。「死んだらおしまい」になることが怖いなら、今を必死に生きるしかないと思うのですが。
わたしの友人の父親(当時80代)は、家が火事になるのが怖くてずっと外に出ずにいました。でも毎日一万歩歩き、一日30品目の食物を食べていました。家事はすべて妻に委ね、買い物等の外出は最小限の時間で戻ってくるように求めました。妻はそんな生活に疲れてうつになってしまいました。長男である友人は54歳で早期退職し、父親が亡くなるまでの8年間面倒をみました。
母親がひとりで家にいた時にボヤを出してしまったという事件が、この父親の恐怖心の原因だろうと友人は言っていましたが、何かのきっかけで、このような歪んだ思考に走ってしまう人が世の中に大勢いるのだとしたら、それはホントに怖いことだなと思うのです。
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