『蔦重』 吉森大祐 24-15
日本橋通油町(とおりあぶらちょう)で耕書堂( こうしょどう)という地本(じほん)屋を構える重三郎は吉原の生まれ、他の書店で扱うような高尚な本などには目もくれず、町の人たちが好む「黄表紙」や「洒落本」や「浮世絵」を売り、店を大きくしてきました。
幕府や武家で絵師と言えば名だたる家の人たちだけが仕事をするという世界でしたが、重三郎が扱う本の絵師は、魅力的な絵が描けるのであれば、生まれも育ちも関係ないという考えでした。ですから、絵師の卵である男たちを長屋に住まわせ、彼らの腕を見ながら仕事を割り振っていました。
当時の江戸では「贅沢禁止令」のせいで歌舞伎や吉原はあおりを食っていました。芝居小屋がつぶれたりするようなご時世で、このままでは江戸の文化がなくなってしまうと憂う人たちが集まり、策を練る寄合にも重三郎は呼ばれます。
彼は出版関係だけでなく、江戸の町文化の復興のプロデューサーとしても手腕を振るうことになるのです。
北斎も、写楽も、歌麿も、馬琴も、重三郎がいなかったら、後世に名を残すことはなかったのかもしれません。
この5篇が収められています。
・美女礼讃(びじょれいさん)
・桔梗屋の女房(ききょうやのにょうぼう)
・木挽町の絵師(こびきちょうのえし)
・白縫姫奇譚(しらぬいひめきたん)
・うかれ十郎兵衛(うかれじゅうろべえ)
「なにかしくじりをしたとき、正しさをふりかざして説教する男より、こまけえことは気にするなって笑ってくれる男の方がずっといい。しゃらくせえって名前、本当にいいと思わない?」
そんなことを言うお静の顔を見ながら、重三郎は唖然とした。
頭もよく、勤勉だし、商売のカンもいい重三郎だけど、幼馴染のお静から、人としての魅力には欠けるよって言われてへこんでしまう所がかわいいじゃないですか。
#蔦重 #NetGalleyJP
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