『銀座「四宝堂」文房具店 Ⅱ』 上田健次 24-23
銀座にある小さな文房具店「四宝堂」は、硯(けん)のおじいさんが始めたお店です。その時代からのお客様もいれば、今日初めてのお客様もいます。静かなお店の中には鉛筆や万年筆のような筆記用具、ノートや便箋のような紙製品、ハサミや鉛筆削りなど様々な文房具が揃っています。
文房具なんてどこで買っても一緒だよって思う人もいるけれど、この店だからこそ欲しくなるものを見つけに来る人がいます。そして、この店で買った物の思い出をいつまでも大事にしてくれる人がいるのです。
そんなお客様のために、四宝堂は今日も営業し続けています。
目印は赤いポスト、ガラスの扉はいつもピカピカに磨かれています。
この5篇が収められています。
・単語帳 もうすぐ結婚する娘からここへ来てくださいという連絡があって、夫妻は初めて四宝堂へやってきました。
・ハサミ 職業体験実習でやってきた中2の2人は、店内の催事売場の企画を任されました。
・名刺 定年を迎えた男性は、総務一筋の人でした。最後の日に、思い出の店を訪ねてみたのです。
・栞 良子ちゃんと硯ちゃんは幼馴染なのに、一緒に旅行をするのは初めて。
・色鉛筆 名入れをしてもらった鉛筆の思い出はを語るとき、心は小学生の頃に戻っていました。
「名刺」には泣かされてしまいました。学歴で出世が決まってしまう会社の中で、それでも頑張ってこれたのは、入社当時に目をかけてもらった会長さんのおかげですね。会長さんが教えて下さった「優しい心が人を呼ぶ」ということを愚直に守ったからこそ、素晴らしい最後の日を迎えられたのですね。
3049冊目(今年23冊目)
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